次に音質だが、筆者はNC機能よりも、MDR-NC500Dの音楽の再生音質に驚かされた。高域から低域まで、実にクリア。また音離れがよいのでしっかりとした解像感が感じられる。弦楽器の音には張りがあり、管楽器はきらびやかに響く。中低音がグズることはなく、小気味よい響きを送り出す。大げさではなく、高級ヘッドホンと互角に渡り合える音質だ。
これにはNC機能も大きく貢献しているだろう。NC機能が雑音を軽減させることで、静かなリスニングルームを提供してくれているようだ。そこへ、解像感のある音楽再生をする。筆者はこれまでNCヘッドホンは騒音環境下で使う特殊なものであり、音質が多少劣化するのは仕方がないと割り切っていた。しかし、MDR-NC500Dの登場で、その認識は改めなければいけなくなったようだ。これなら、家でのメインヘッドホンとして使ってもよさそうだ。
いいことずくめだが、気になる部分もある。まずバッテリだ。内蔵充電池で約15時間、バッテリパックで約10時間というのは、ヘッドホンとしてはかなり短い。まるで少し前の音楽プレーヤー並のスタミナだ。それだけDSPなど、デジタル回路を駆動するには電力を要するのだろう。次期モデルでは、倍ぐらいまで使用時間を延長していただきたいところだ。
バッテリはできれば電池内蔵型の方が望ましかった。下の写真を見ていただきたいが、付属の専用ポーチには充電器、バッテリパック、交換用の電池と、まるで子ども時代に遊んだ「スパイアタッシュケース」のようにオプションがにぎやかに並ぶ。NCヘッドホンと言えば、旅行のお供に欠かせない製品だけに、使わずに持ち運ぶときもコンパクトにまとめられるデザインはできないものだろうか?
また、ノイズキャンセリング機能の電源をオフにしている時は再生音が流れないので、通常のヘッドホンとして使用することができない。
昨年発売された同社初の本格的なNCヘッドホン「MDR-NC60」が登場したとき、多くの人が肩すかしを食らったような気がしたはずだ。筆者もその1人で、スタンダードなヘッドホンでは数々の名機を送り出す同社なのに……と、あらためてNCヘッドホン作りの難しさを感じた。
しかしMDR-NC500Dには“世界初のデジタル式NCヘッドホン”という鳴り物だけでなく、ヘッドホンに基本である音作りの部分にまで、十分な愛情が注がれている。いまNCヘッドホンを選ぶなら、真っ先に手に取るべき製品だと感じた。
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