ユビキタスの下落が止まらない。2007年11月、ジャスダックが創設した新市場「NEO」の第1号上場案件として華々しく上場した同社に今、何が起きているのか。
通信分野に特化したソフト開発を手掛けるユビキタス。大ヒットした「ニンテンドーDS」のWi-Fi対応ソフトを開発した企業として、将来が有望視されている。
2007年11月13日に新規上場し、上場初日は買い人気が殺到して値段が付かなかった。上場2日目に付けた初値は公開価格の4倍に相当する40万円。上場から3週間経った12月6日には51万4000円の高値を付けていた。
ただ、その後は全般相場を上回るスピードで下落。3月10日には高値比3分の1以下の15万9000円まで売り込まれた。
1月29日に発表した今3月期第3四半期決算は、任天堂向けの通信ソフトが好調で非連結売上高が6億7600万円、経常利益は3億4000万円となった。通期では売上高9億3100万円、経常利益4億3800万円を計画しており、9カ月間経過した段階での進ちょく率は売上高が72.6%、経常利益は77.6%に達している。
第3四半期までに株式公開費用を計上していることなどを考慮すると、業績動向は順調に推移している。期末に向けて業績計画の上方修正期待も高まる水準だ。
中期的な収益拡大期待への期待も高い。この第3四半期時点で任天堂向けの売り上げは82.3%を占める。例え絶好調の任天堂とはいえ、一極集中型の収益体質はリスクとみられているが、ユビキタスはゲーム向けに続く第2の収益の柱も育成中。
デジタル家電向けのネットワーク対応ソフト、半導体業界向けソフトがそれで、この第3四半期段階でも開発の進ちょく状況を開示している。任天堂向け売り上げ比率引き下げは順調だ。
上場時に公表したマイルストーン開示では、2010年3月期に非連結売上高20億円、経常利益10億円を掲げる。この時、半導体業界向けなどが成長し、現在の売上高のほとんどを占めるゲーム機向けの比率が3割程度まで下がる見通しだ。
足元の業績、中期的な見通しとも文句の付けようのない内容。株式市場は収益面ではなく、需給面への懸念を強めている。
2月下旬、新興市場ではマザーズ上場企業のオーベン(旧アイ・シー・エフ)が虚偽の企業情報を流したとの疑いが持たれ、株価が急落していた。結局、オーベンの旧経営陣や関係があった梁山泊経営幹部が逮捕され、オーベン株は上場廃止の恐れがあるとして監理ポストに割り当てられた。
ユビキタスの中村佳久会長はユビキタス設立前にオーベンに執行役員として在籍していた経緯があり、株式市場では関連性が懸念されていた。“梁山泊事件”との関係性が問題視されていたわけだ。ユビキタスは2月12日付で「一切関係ない」とのコメントをリリース。しかし、2月末には中村佳久会長がユビキタスの会長を辞任すると発表した。
中村会長はユビキタス株の16万株、発行済み株式の18.88%を保有(上場時の目論見書ベース)する。会長の辞任によりオーベンとユビキタスの関連性への懸念は後退しているものの、中村会長が保有する株式を売却、市場に出回るのでは、との不安が浮上している。
収益面などの実態は好調だが、株価を形成する最大の要因は需給面。ユビキタスについても実態に対する割安感が台頭してきているものの、需給面への懸念がある限り、株価の戻りは鈍そうだ。
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