IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏や法政大学社会学部准教授の白田秀彰氏、AV機器評論家・コラムニストの小寺信良氏ら11人が発起人となった任意団体「インターネット先進ユーザーの会(MiAU)」は12月26日、緊急シンポジウム「ダウンロード違法化の是非を問う」を開催、法律・経済・技術などの観点から、違法サイトからのコンテンツダウンロードを違法化する動きへの警鐘を鳴らした。
シンポジウムは、12月18日の文化審議会著作権分科会指摘録音録画小委員会第15回会合において、事務局である文化庁著作権課より「違法複製物からの複製は(私的録音録画の有効性を定めた)第30条の適用除外とする」という資料が提出され、その方向で報告書をまとめる動きが強まったことを受けて開催されたもの。
MiAUではこの方針について「パブリックコメントで出された疑問点について答えることもなく、かつ結論にいたった経緯や議論の透明性が欠如している」として否定的な議論を展開した。
パネリストとして参加したのは、IT・音楽ジャーナリストで同小委員会専門委員も務める津田大介氏のほか、弁護士の小倉秀夫氏、上武大学大学院経営管理研究科教授でICPF・情報通信政策フォーラム代表の池田信夫氏、慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC機構)の斉藤賢爾氏。モデレーターはAV機器評論家でコラムニストの小寺信良氏がつとめた。
経済学の観点から「(違法ダウンロードは)日本経済にとってプラスである」との考えを示したのは池田信夫氏。「音楽家やレコード会社の機会孫出という面で経済損失はあるが、宣伝効果という便益とほぼ同等。(ダウンロードによる)消費者の効用を加味すれば、むしろ正の経済効果が上回る」(池田氏)と説明した。
その上で「違法化を是とする政府関係者は、業者の経済的損失しか見ていない。ファイル共有が社会全体におってプラス効果をもたらしているという事実を考えれば、業者の損得だけを考える(政府の)根本前提が狂っている」(同)と厳しく批判した。
池田氏は、さらに当該官庁である文化庁を糾弾。「(文化庁は)総務省や経済産業省が手を焼くほど霞ヶ関で浮き上がった存在。IPマルチキャストによる放送再送信サービスにおいても、ひとり場違いな主張で進展を阻害した。そもそも、神社仏閣を扱うような官庁が携わるべき内容ではない」とするなど、著作権法関連業務における文化庁のスタンスを疑問視した。
法律的観点から違法化への動きを牽制した小倉氏は、著作権法30条について「『法は家庭に入らず』の原則を守ったものであり、これが排除されると法が家庭に張り込むことになる」と指摘。「ダウンロードを取り締まることになれば、各家庭でPC端末の中身を確認する作業が必要になる。一般市民のプライバシーが著しく侵害されることになるのでは」との危惧感を示した。
デジタル時代のコピー制限における根拠となるDRMについて、慶応義塾大学DMC機構の斉藤氏は「技術的にいえば、すべてのDRMは解除可能」と説明。また、適法サイトを示すマークについても「適法マーク自体をデジタル署名や電子透かしでガードすれば、そのコストについていけない権利者が出てくる。逆にコストを下げてガードを低くすれば、適法マークそのものが複製される」と存在意義の低さを指摘した。
一方、そもそも違法行為を取り締まろうとする動きに対して、反対姿勢を示す活動を疑問視する声も少なくない状況については「きちんと議論がなされた上で(違法化が)進むのであれば賛成する」(津田氏)と説明。また、モデレーターの小寺氏も「なぜ違法行為を取り締まる動きに反対するのか、リテラシーの高くないユーザーにも説明できるキャッチは必要」と今後の啓蒙活動における課題を述べた。
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