アウンコンサルティング急落、失望売りの背景と現実

 アウンコンサルティングの急落が株式市場で話題となっている。12月17日の取引終了後に2008年5月期11月中間期業績計画の下方修正を発表。高成長期待が一気に剥落し、同社株は翌18日の取引開始とともに大量の失望売りを浴びた。

矢継ぎ早に材料提供するも…

 アウンコンサルティングは検索エンジン最適化コンサルティング、SEOを軸とした検索エンジンマーケティングの大手。SEOは成長を続けるインターネット広告市場の中でも、最も成長性の高い分野のひとつとして注目を集めていた。アウンコンサルティングが自ら算出したSEOの2006年の市場規模は2005年比較で24%伸びて約80億円。2007年以降も前年比2ケタ成長が続く見通しにある。

 SEOの専門企業は現在、アウンコンサルティングのほか、アイレップ、フルスピードと3社が株式公開。3社とも、市場の成長性の高さを背景に株式市場で他のインターネット広告関連企業より高い評価を受けている。アウンはアイレップ、フルスピードに先行して2005年11月に株式公開。株式市場では、業界のリーディングカンパニーと認識されていた。

 12月17日に発表した中間期業績の下方修正は、連結売上高が従来予想30億4400万円から25億7700万円(前年同期比4%増)へ、経常利益は同4億3500万円から3億3500万円(同6%増)へ減額するもの。

 内容を見てみると、SEOが順調な成長を続ける一方で、検索連動型・コンテンツ連動型広告のP4Pが事業再構築に伴い、計画を下回る見込みとなっている。P4PはSEOに比べて利益率が低い。競争激化を背景とした価格競争が発生しており、アウンコンサルティングとしては値引き競争を回避して、コンサルティングを中心に利益率の高いビジネスに軸足を移す方針を示している。意図的な意味も含む下方修正ととることもできる。

 アウンコンサルティングでは下方修正を発表した同じ日に、シリウステクノロジー(非上場)からモバイルSEO事業を譲り受けると発表。アウンコンサルティングが従来から手掛けているパソコンと、シリウスから譲り受けたモバイルのコンサルティングを組み合わせ、クライアントにワンストップでサービスを提供できる体制を整えている。

 18日にはSEM(検索エンジンマーケティング)の運用業務のチケット制オーダーシステム「SEMチケット」をOEM(相手先ブランドによる生産)で提供するプログラムを開始。その第1弾として、中古車情報誌「Goo」のプロトコーポレーションへサービスを提供すると発表した。続いて19日は米国におけるプロモーション実態調査を行い、リポートの販売を開始したと発表したばかり。

 矢継ぎ早に材料を提供しているものの、株価は下値模索の展開が継続。業績面にしても、中間期計画こそ当初予想を下回る見通しとなったものの、会社側ではM&A(企業の合併、買収)で取得したモバイルSEOが寄与する影響度を見定めたいとし、通期計画は従来予想を据え置いている。

業界再編の機運高まる

 連結売上高は前期比19%増の62億5900万円、経常利益は同27%増の9億600万円を見込む。SEO市場の順調な拡大は続いており、下期の巻き返しで従来予想の通期計画が達成できる可能性は残っている。

 しかし、株価は下方修正発表後のショック売りが一巡した後、新たな材料が相次いで出現しても買いが続かず、急落後のリバウンドもない状況。2007年8月に付けた株式分割を考慮した上場来安値12万2000円を意識した値動きとなっている。

 インターネット広告業界は電通によるオプトへの追加出資を受け、一気に業界再編の機運が高まってきている。大手広告代理店系の総合ネット代理店のほか、成長鈍化色の強まっているアフィリエイト広告業界の専業各社などにもM&A思惑が広がっている。

 とはいえ、株式市場は引き続き業績面に神経質。これまでのアウンコンサルティングの株価は業績の高成長を前提に形成されていただけに、例え下方修正幅が小さくとも市場の受けたショックは大きい。株式市場的にはネット広告各社を再度見直す動き出てきたが、アウンコンサルティング株に限っては当面、そのショックを引きずる展開が続きそうだ。

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