テクノロジー系ベンチャーの健全発展を支援するネットワーキンググループ「Venture BEAT Project」が、発足1年を経過した。メンバーは100人を超え、この中でさまざまなイノベーションが生まれる可能性は日に日に増している。
今後、その可能性をさらに最大化することを目的として、月例のネットワーキングに業界のインフルエンサーなどを招待しディスカッションを行う。これにより、拡大した「Venture BEAT Project」メンバー間のより円滑なネットワーキングを実現する。モデレーターは三菱UFJキャピタルの渡辺洋行氏が努める。
渡辺:三菱UFJキャピタルの渡辺です。本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございました。今後、月例のネットワーキングでは、毎回、ゲストスピーカーを招き、業界の最新動向やゲストスピーカーのビジネスなどについてディスカッションを行います。
第1回目のスピーカーはフィードパス代表取締役社長CEOの津幡さんです。津幡さんはサイボウズの副社長を務められていましたが、2007年の春、同社を退職し、子会社でもあるフィードパスの社長になられました。このことは個人的にものすごく衝撃的でした。上場企業の役員にまで登りつめ、会社の舵取りをしていた人間が、子会社とはいえ、ベンチャーそのものといった感のある会社に移られたからです。
津幡さんとは個人的に親しくお付合いさせて頂いていますが、実は、この話はずっと聞けなかったんです。今日はいい機会ですので、聞きづらいことも含めて質問していきますので、よろしくお願いします(笑)
ではまず、フィードパスという会社が何をしているのかということと、サイボウズとの違い、簡単な会社沿革を教えて下さい。
津幡氏:ソフトウェアがネット経由で提供されるのは、コンシューマ向けサービスの世界では当たり前になってきています。一方、ビジネス向けはパッケージをカスタマイズしてインストールするというのが一般的ですが、ここでもネットを介してカスタマイズ提供するという世界が、少しずつですが広まりつつあります。
このSaasに特化していこうというのがフィードパスという会社です。逆に、パッケージの部分をやっているのがサイボウズ。要は、サイボウズがやっていないWeb 2.0系サービスをしているのがフィードパスだと認識いただければいいでしょう。
こうしたSaasによるソフトのライセンス提供およびネットビジネス展開というのは、日本では希有なビジネスモデルです。しかし、ネット提供はスピーディーなアライアンスを組むことも可能なので、究極的には各方面から「企業向けソフトはウェブで提供された方がいい」と思われる世の中を作っていきたいです。これはモバイルも含めて考えていきます。
私自身は約5年前にサイボウズへジョインしましたが、2007年春に取締役を退任し、フィードパスの社長に就任しました。フィードパスは主要株主がサイボウズ、住友商事などという会社で、沿革としてはネットエイジ(現ngi group)がインキュベートしたイントラブログ提供のブログエンジンにサイボウズが資本参加し、2007年春からは企業向けにSaasを提供する会社になりました。
現時点はライセンスが一番のビジネスになっていて、Zimbraと組んで国内展開している「feedpath Zebra」やイントラブログの「Blogengine」の提供が主なものとなっています。
渡辺:今やサイボウズは大企業。イノベーションのジレンマと呼ぶべき壁があり、会社としてやりづらい部分もあったため、そこを津幡さんがやろうとした――という解釈をしてもよろしいですか。
津幡氏:確かに、企業というのはどこかで内部要因としてゆさぶっていくだとか、外部に実験台を作るなどしないと、売上高が100億円の会社にはなれても、1000億円の会社にはなれないのかなと。そう思ったので、意識的にゆさぶろうとしたということはありますね。
渡辺:でも、普通なら辞めない。サイボウズにいても、フィードパス事業にジョインすることも可能ではありましたよね。
津幡氏:どうですかね、ただ、自分がやりたいという気持ちと、やれるという気持ちのバランスを考えたとき、中でやる方がいいのか、外で場を作った方がいいのか――ということは考えて、結果的に「場を作れる立場なら、場を作った方がいい」と決断しました。
転職の経験があると分かると思うのですが、“スイッチが入る時”ってあると思うんですよ。僕もある日スイッチが入って、「フィードパスに専念したい」と次の日には話をしていました。周りにはドン引きされて、社長の青野さんも含め、他の役員に理解されづらかったみたいですが(笑)。
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