「物事に屈しない意志」で世界への扉を開けたオウケイウェイヴ - (page 2)

 進取の気性に富んだ企業の社長でありながら、というと語弊があるが、兼元氏の求める人材は、ある面においては非常にトラッドでオーソドックスだ。採用の面接は計4回。自ら行う最終面接で、兼元氏がまずチェックするのは、能力や技術ではなく「やる気」だという。

「物事に屈しない、という強い意志ですね。必ず『この会社でやりたいことは何ですか?』と聞くのは、それを計るためでもあります。中国や韓国の方は、『教えてさえもらえれば、死ぬ気で働きます』と答える人が多いですが、ギブ・アンド・テイクをきちんと理解した回答だと思います。それから中途採用なら、なぜ前の会社を辞め、弊社に入ろうと思ったか。そこを徹底的に問い質します」

 その質問に対する答えは、要約すると3つに大別できる、と兼元氏はいう。1つ目は「嫌になったから」、2つ目は「キャリアアップしたいから」で、この2つの場合は採用の対象から外す。兼元氏の求める“正解”は、「前の会社でこのような貢献をしようと考えていたが、方向性の違いで成し得なかった」というものだ。

 オウケイウェイヴは、2010年をめどに、世界100カ国にQ&Aソリューションを提供する目標を掲げている。オウケイウェイヴは前例のないことにチャレンジする会社、との自負の強い兼元氏だけに、少なくとも途中までは、社の目標と一致した自分なりの未来図を持った人でなければ、本人と会社双方にとってプラスはないと考えている。

 さらに兼元氏は、オウケイウェイヴの社員全員に、将来独立してもやっていけるだけの幅広い視野と能力を身につけさせるため、営業と財務、企画、マーケティングの4本柱を必ず経験させる。その一環として2006年から始めたのが、事業化を目的とした社内のビジネスコンテストだ。各年ごとにテーマを設け(2007年は「社会貢献性」)、1位の企画には社長賞100万円と、人材を引き抜く権利が与えられる。前述の「docune」も、実はこのビジネスコンテストで生まれたサービスだ。

オウケイウェイヴ代表取締役社長の兼元謙任氏 「物事に屈しない、という強い意志が大切」と兼元社長

「グループ内で起業しようと、グループから離れて完全に独立しようと構いませんが、Q&Aのインフラの上で事業展開して欲しい、という願いはあります。つまり、金よりも意義というか、政府や大機構の成し得なかったことをベンチャーが担う、という思いだけは持ち続けて欲しいんです」

 また、社員のやる気を引き出すため、「OKWave」の「ありがとうポイント」と類似のシステムを、社内でも採り入れている。自分以外の社員への感謝を記した「ありがとうカード」を回収し、その結果を随時発表。年度末には、最多得票者に金一封が贈られる。「ありがとうカード」は、週に300枚以上投票されるという。

 楽天との共闘態勢が整い、米OKWave Inc.も立ち上がった。会社設立当初からの悲願、「世界規模の知識市場の確立」を達成するための具体的な第一歩が、ようやく踏み出された段階だ。課金制や知識派遣システムなど、Q&Aサイトのビジネスに、今後大きな可能性が秘められているのは確かであり、兼元氏自身も、人々の役に立ち、かつ余りある収益源になることを信じて疑わない。前途は洋々であるが、同時に多難でもある。

「今の米国では、どうやったらYahoo!やMicrosoft、Googleといった企業に製品やサービスを買ってもらえるか、という発想をしなければ、ベンチャーキャピタルの支援を受けられません。コンサルタントからは、『ビジネスを一から大きくして、トヨタみたいな企業を作ろうと思ってるんだろう』とダメ出しされましたよ」

 周囲の多くの人が「絶対成功しない」と考えている状況に接し、兼元氏は、8年前に「OKWave」を立ち上げたときとまったく同じだ、と思い出していた。そしてオウケイウェイヴは、そうしたネガティブな意見をはねのけ、乗り越えてきたんだ、と。

「世界中の人と人を信頼の輪で繋ぎ、挑戦を続けるにあたって最も大事なのは『愛』。社員には、臆面もなくそういえる人になって欲しいと思います」

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