20年前の学生は、調べ物をするのに、大学の図書館や国会図書館へ行って、文献を探してレポートを作っていたものでした。しかし今、米国において、そもそも学生が作ったウェブサービスで大ブレイク中のものがあります。
SNSサービスのFacebookは、2007年5月、サイト上に様々なサービスを展開できるAPI(Application Interface)を公開しました。このAPIを使用したサービスは、2007年11月現在、なんと7000サービス以上存在しています。音楽のダウンロードサービスであったり、電子商取引であったり、同サイト上に様々なサービスが急増しています。加え、同11月に、彼らは、アクセス数の増加に伴い新しい広告商品を発表しました。この広告商品を利用して、自分が作った各サービスに一層エンドユーザー(以下ユーザー)を集客することができるようになったのです。
このような一連の状況は、インターネットの初期段階に非常に似ていると感じています。様々なサービスが乱立し、ディレクトリサービスが始まり、単純な広告モデルが生まれ、インターネット上で広告費が動き始めたころです。今後、「APIを公開したFacebookをはじめとするSNS上に、一層高度なサービスが複数生みだされ、次に検索サービスが発展し、その後検索連動型の広告が生まれていく」ようなことは、まるでインターネットがたどった発展段階に類似しており、将来、SNSサービスが、現在のインターネットと同じように生活になくてはならないプラットフォームになるかもしれないことを示唆しています。
一方、米国において最近急成長しているYelp.comという専門サイト(口コミサイト)があります。競争相手と思われるCitysearch.comに月間アクセス数で追いつきつつあるサイトです。1人あたりの閲覧PV数においては、すでに大きく勝っており、ユーザーが熱心に使っているサイトと思われます。実際、ポータルサイトよりも先に本サイトを閲覧するユーザーも急増しており、その理由として考えられるのは、(1)API公開による他サイトとのサービス連携、(2)簡易な地域情報しかないポータルとの詳細情報掲載による差別化、(3)オフ会などを活用したユーザーとのエンゲージメントの構築、などのようです。
API公開によるサービスの多様化、ユーザーとの直接的な関係性の強化などによりSNS等は、今後、ユーザーにフレンドリなプラットフォームとして発展していくでしょう。消費者主導社会になりつつある中で、SNSとユーザーの至近性に中間媒介者たる私どもはどう入り込んでいかなくてはならないのでしょうか? それはポータルのようなメディアとユーザーの橋渡しをすることよりも難しいことと思われます。
11月19日のJAAAのセミナーにおいて、博報堂の田中氏の講演は、それに対する大きなヒントを提供したと思います。
「生活者主導社会TMの中で、コミュケーションの目的は、ブランドとターゲットのエンゲージメント(共感)作りになってくる」。つまり、ユーザーの「心を動かす」ために広告主の(共感のための)アイディア開発が重要になってくるのです、と。SNSがプラットフォームになっていく時代に、重要なことは広告主からユーザーに歩み寄る姿勢なのかもしれません。
大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。
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