IT業界でキャリアアップするとはどういうことか--業界人が議論

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 情報処理推進機構(IPA)が開催したIPAフォーラム2007での議論に端を発した、IT業界の不人気論。IT業界で働く人たちは、そこで働くことやキャリアアップについてどのように考えているのだろうか。この問題について議論するパネルディスカッションが、11月17日に開催されたミリオンタイムズスクウェア実行委員会主催のイベント「ミリオンタイムズスクウェア キャリアアップセミナー」において行われた。

 ドワンゴ研究開発部 部長およびニワンゴ取締役である溝口浩二氏、組み込みソフト開発のアックス代表取締役である竹岡尚三氏、チームラボ取締役である吉村譲氏、慶應義塾大学の学生である八巻渉氏、システム受託開発のトランス・ニュー・テクノロジー代表取締役である木村光範氏、コンサルティングのフューチャーラボラトリ代表取締役である橋本昌隆氏の6名が出席した。

 第1部は「30年後、ITに携わっていますか?」というタイトルで、木村氏の司会により進行した。まずは直前に行われた溝口氏の講演(参照:ニワンゴ技術責任者が語る、「ニコニコ動画」成功の鍵)を受け、プログラマーのマネジメント業務について討論が展開された。

ドワンゴ研究開発部 部長およびニワンゴ取締役である溝口浩二氏 ドワンゴ研究開発部 部長およびニワンゴ取締役である溝口浩二氏

 「30代はプログラマー、40代はマネジメントという流れはあると思います。もともとコンピュータやゲーム、プログラムが好きで入社しても、ある程度の期間が経つとコーディネート力が求められます。そういう部分と自分の好きなことを、うまく調整していく必要があるでしょうね」(溝口氏)

 ただし、技術に対する理解は引き続き必要だ。「逆にマネージャー志向で入社してくる人は、ドロップすることが多いように感じます」(溝口氏)、「マネージメントする立場の人も、プログラムの本質を理解していることは大事です。ひとつのソースコードしか書けないとソースが変わると対応できないけど、本質がわかっていれば対応できますから」(吉村氏)、「コードを書けなくても、今の技術で何ができるとかということを社長は知っているべき。でも、社長がコード書けると社員は大変だよね。納期とかごまかせないもん(笑)」(竹岡氏)との発言が続く。

 また、プログラミング自体が経営に通じるという意見も見られた。「コーディングできなくても会社は成り立つけど、社長がコードを書ける会社は元気な印象があります」(八巻氏)、「経営という観点では、コードを書く人も経営してると思うんですよね。経営もコードを書くようなものですから。そのせいか、コードを書けないと上に行けないという雰囲気はありますね」(溝口氏)、「組織作りは大きな課題ですね。コードを書くことはビジネスに直結します。この業界では、コードを書いてもらわないとビジネスが成り立たないわけですから」(吉村氏)

 議論は、プログラム開発がモノ作りか、サービスかという点で盛り上がった。「ITであってもそうでなくても、仕事というものは最終的にサービス業になると思います」(橋本氏)、「考え方として、お客様に対する仕事はすべてサービス業だと思います」(八巻氏)、「うーん、難しいですね。業種で分けるとしたら製造業ではなくサービス業でしょうね」(吉村氏)

 これに対しニワンゴの溝口氏は、サービス業と言われることには違和感を覚えると話す。「世の中を変えていくという実感はサービス業にはないものです。もちろん、お客様の声を取り入れるという点ではサービス業の側面もありますし、どちらの側面もあって、どちらも楽しいことは確かです。技術者ならではのおもしろいものを作って、『すごい』って言わせたいですね」(溝口氏)

 ただし、作り手として目指すものは顧客の満足であるという点では一致した。「職人だけど顧客満足を重視する。サービス精神を持って、売れるものと作りたいものをうまくバランスしていくんでしょうかね。私は組み込みソフトという関係上、メーカー相手のやり取りが多いです。でも、本当にやりたいことと発注の仕様がずれていることもあるんですよね。そんなときは、こっそり仕様を広げておくこともあります。それが最終的に顧客満足につながったりしますね」(竹岡氏)

チームラボ取締役である吉村譲氏 チームラボ取締役の吉村譲氏

 第1部の締めくくりに、「30年後はどうしているか」という質問を木村氏が投げかけた。「10年後を考えることでも精一杯ですから、考えられないですね。25年くらい経たないと(笑)。30年後にはお客様へのアプローチ手法も変わっているでしょうし、ウェブではなくなっているかも知れません。でも、仕事の仕方は変わっても、情報を伝えていきたいですね」(吉村氏)

 「組み込みソフトの場合、家電や携帯電話、シンクライアントなど、いろんなところで使われています。最近は自動車への組み込みが多く、ここ3〜5年は自動車が中心になりそうですが、組み込みの用途は30年後もあまり変わらない気がします」(竹岡氏)、「やりたいことをやりたいですが、収入の最低ラインは維持していたいですね。ITや環境を変えていけたらいいなと思います」(八巻氏)

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