[NEO誕生]“元祖ベンチャー市場”の意地見せるJASDAQの挑戦

島田昇(編集部)2007年11月08日 22時41分

 ジャスダック証券取引所は11月13日、先端技術を持つ新興企業向け新市場「NEO」を創設する。同日、ソフトウェア開発のユビキタス、12月6日には電子マネー運営のウェブマネーが上場する見通しとなった。2社ともIT関連企業だ。

 従来の適時開示に加え、新たに経営計画の進ちょく状況などの説明を行う「マイルストーン開示」などを導入。JASDAQに上場する企業のベンチャー色が薄れつつあると指摘される中、再び新興企業の誘致戦略を強化することで、東証マザーズや大証ヘラクレスに対抗する。

 今後、IT関連企業に大きな影響を与えると予測されるNEOの可能性と課題を探った。

模索する本来の「新興市場」というイメージ

 NEOの取引開始を間近に控え、ジャスダック証券取引所取締役代表執行役社長である筒井高志氏は、ある構想を頭の中に思い浮かべる。

筒井氏 「『JASDAQセレクト』という新市場を作りたい」と語るジャスダック証券取引所取締役代表執行役社長である筒井高志氏

 「JASDAQは実績積み上げ型、NEOはイノベーション型の市場で、2つはあくまで並列の関係。この2つの上に、例えば『JASDAQセレクト』という新市場を作りたい」

 本来、国内の主要取引所となる東京証券取引所の一方で、急成長が見込める国内の新興銘柄の取引を担っていた旧店頭市場を引き継いだJASDAQ。それが2006年1月の「ライブドアショック」による新興市場の長期低迷が続く中、東証マザーズおよび大証ヘラクレスに比べ、急成長が見込める先端業種銘柄の比率が低いと指摘されている。

 市場関係者たちは「JASDAQは急成長は見込めないが中規模の安定した銘柄がそろっているというイメージ。急成長が見込める小規模の新興企業であれば、大証の地盤沈下も指摘される中、将来的に東証を通じて世界を目指せるマザーズに向かうのが自然の流れ」と口をそろえる。

 筒井氏はこうした市場関係者たちの見方を踏まえ、JASDAQの主力銘柄とNEOの優良銘柄が集まる新市場を提案することで「中規模の安定銘柄が多い」というイメージを払拭。世界最大の新興市場となる米NASDAQのように、急成長銘柄を期待する投資家を呼び込みたいという狙いがあるようだ。

 「当初は店頭市場で取引されたソニー(当時は東京通信工業)のような世界に通用するベンチャーを、再び育てていきたい」(筒井氏)

投資家の信頼回復と「育てる」を重視

 NEOが掲げるキーワードはイノベーション。「ライブドアショック」以降、新興市場に漂う閉塞感をかんがみ、「新しい日本を作るためにはイノベーションが必要。渦巻きを起こせるような研究開発型で新しいビジネスモデルを持った企業が健全かつ公開企業として登場してもらいたいと思っている」(同)。

 業種は特に限定していないが、特にIT関連、バイオテクノロジー、新素材、ロボット関連などの企業を想定している模様で、月に1社ペースの上場を見込み、銘柄の量よりも質を重視。上場審査は従来のJASDAQ上場会社よりも株主数、純資産額、売上高などについての基準を緩和しているが、「マイルストーン開示」でIR(投資家向け広報)活動の強化を求めているのが特徴だ。

 「(ライブドア前々社長の)堀江(貴文被告)はいい面もたくさんあったが、どうしても許せないのは『自分だけ良ければいい』という精神。新しいイノベーションを起こすには、シリコンバレーのようにいい企業が出てくればみんなで拍手するという精神がないと、研究開発型のベンチャーが育つ土壌は整わない」(同)。

 投資家の信頼回復を重視する姿勢を示すとともに、シリコンバレー型の「ベンチャーを育てる土壌がある」というイメージを前面に押し出している。

 その上で将来の成長性を示す適切な事業計画を重視。先端技術がある場合には、その技術について説明する関連書類の提出を義務付け、新設する技術評価組織「アドバイザリー・コミッティー」がこれを評価するという仕組みも導入した。

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