ラテン語で「同時にいたるところに存在する」を意味するユビキタス。同名の社名を冠し、その実現を促すためのソフトウェア開発を行う同社が11月13日、新市場「NEO」に第一号として上場する。
生活の至るところにコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作。いつでもどこでも、誰もが情報ネットワークにアクセスできる社会──。
現時点ではゲーム機向けの技術提供の比重が高い同社だが、ユビキタス代表取締役社長である川内雅彦氏は今後の成長に向けた壮大なビジョンを語る。同氏に上場までの経緯やなぜNEOを上場先に選んだのか、また、ユビキタス・ネットワークが社会にどのような影響を与えていくのかを聞いた。
2001年当時、マイクロソフトのエンジニアがスピンオフして創業しました。今話題の携帯用ゲーム機「ニンテンドーDS」で我々の技術を採用していただいてから実績が伸びているため、ゲーム機関連の会社だと見られがちですが、我々が本来目指している市場とは異なります。
ネットワークはLANの時代からインターネットの時代へと変遷をしてきました。「では、次に何がくるか」が我々のテーマであり、それがいわゆる「ユビキタス・ネットワーク」であると考えております。
元々の狙いはPCのような大型機器と違って、さまざまな小型デバイス(たとえば電球の裏についているほどの小型基盤)をネットワークに繋げる構想です。接続用ソフトウェアは一筋縄ではいかない問題で、それを「小さくて早くて軽い」にするのが元々のテーマです。
人の縁に恵まれたおかげで、最初は東芝のセキュリティ用ウェブカメラに採用いだけました。そのおかげか、次に半導体開発のルネサステクノロジと包括契約を結ぶことが出来たため、さまざまな場所で我々の技術が使われる運びとなりました。
任天堂と手を組めたことは運だと思っております。ライバルである「PSP」はコンセプトが小型PCみたいなもので、従来の技術の延長だったわけです。一方、ニンテンドーDSは従来にない考えが詰め込まれていて、開発の現場の空気が熱く、新鮮で楽しかったです。
しかし、玩具として非常にシンプルですっきりしている分、制約条件には厳しいものがありました。もっとも、我々は条件が厳しければ厳しいほどやりがいを感じるため、満遍なく力を発揮できたと自負しております。
また、弊社と任天堂はお互いの求めるものが80%合致していたものですから、残りの20%を両社間でつめました。ですから、非常に集中してリソースを投入したので開発期間は短く半年程度で済みました。
確かに、現状では不安定な経営であると認識しております。収益の柱は3本ないと安定して成り立たないため、あと2本を2010年ごろまでに確立します。
2007年時点で将来ネットワークに繋がるであろうデバイスは20億台強あり、年間成長率が20%あるわけなので、母数はかなり大きいと思っております。ゲームで調子がいいように思われている我々ですが、それはほんの一部。コア部分はこれからと考えております。
ゲーム機の次の柱として、我々はデジタル家電が重要な収益になると踏んでおります。
今後のIP放送対応ソリューションでメーカーが社内で行っている技術がハイビジョン画像のみだとしたら、我々はフルハイビジョン画像を映しながら、認証・暗号化コードやセキュリティにも配慮するといった数段上の物をご提供できる自信があります。すでに技術的検証は終えておりまして、テレビ機器メーカーと協力もさせていただいております。
確かに、大手メーカーも社内ソフト開発比重を増やしているのは感じています。しかし、ソフト業界も近い将来、専門分野に特化した業界とそれをコントロールする業界とに二分していくでしょう。我々はその中でネットワークという分野において総合的に技術をご提供できる会社を目指しております。
コンピュータのコードを書くには技術的な側面と芸術的な側面があります。技術的な側面となる数学的な知識が必要なことは言うまでもありませんが、芸術的な側面はセンスや経験の蓄積が問われるので、我々はむしろこちらを重要視しております。
職人気質と申しますか、小さくて無駄のない効率的なコードを書くことを至上命題としておりまして、我々の書くコードの美しさは他社に真似出来ないものです。
競合という意味では、我々の行っている範囲に絞ると直接競合しているケースはあまりありません。証券会社が類似企業として分類している会社はありますが、我々としては領域が異なると認識しているため、はっきりと申し上げることはできません。
白物家電をネットワーク化する構想自体は80年代までさかのぼることができます。ユビキタス・ネットワークの普及に時間がかかってしまったのは、白物家電を追いすぎてしまったのが第一の原因と考えております。
例えば、冷蔵庫を各家庭で買い換えるスパンは10年以上、しかも、冷蔵庫単体がネットワーク対応していてもまったく役には立ちません。また、バックボーンとなるネットワークも各家庭になかった。
ところが、現在は各家庭への光・ADSLなどのブロードバンドが普及し、無線LANの構築も珍しいものではなくなった。各ビデオゲーム機器メーカーから発売されているゲーム機もネットワーク標準対応が当たり前となってきている。
このように2000年当時とは違い、各家庭でのバックボーンが構築されていること、それに個人がお金を落としやすいエンターテインメント方面が多いことも普及に拍車をかけていると考えます。
わたしの考えるユビキタス・ネットワークの普及は(1)バックボーンの構築(2)エンターテンメントのシナリオの前進(3)ホームコントロール・ホームオートメーション(4)ユビキタス・ネットワークの実現――の4段階あります。
いきなりユビキタス・ネットワークの世界を実現させるのは難しいので、一つ一つ段階を踏まえて着実にビジネスの基盤としたいと思っております。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」