[NEO誕生]ユビキタスが描く壮大なネットワーク社会の未来像 - (page 2)

取材:島田昇(編集部)、文:光安竜也2007年11月08日 23時02分

なぜ、「NEO」なのか

--御社の業績であれば東証マザーズに上場し、将来的なビジョンが実現すれば東証の1、2部を目指すこともできそうです。なぜNEOを上場先に選んだのですか。

 マザーズの株価指数もピーク時の数分の一まで落ち込んでいるので、「マザーズでなければならない」といった状況ではないのが一つあります。

 また、ユビキタス・ネットワークは非常に長い時間をかけて構築していくマーケットです。その長期的な視野で支援していただきたい部分に対し、「マイルストーン開示」に象徴される成長性のある新技術・ビジネスモデルを支援するというNEOの趣旨が我々の求めるものと一致したというのが一つ。

 最後の理由としては、第一号として名乗りを挙げれば露出効果も多いですし、我々のような小さな会社には宣伝効果もかなり期待できるといったところです。

--御社は第一号のメリットを享受できますが、それ以降に上場する企業は御社ほどのメリットは感じづらく、NEO市場全体が盛り上がるには課題も多いとの声もあります。長い目で見てもNEOという市場にこだわりますか。

 しばらくはNEOでがんばろうと考えております。第二号以降については我々が考える立場ではないですから、ジャスダックさんにいい会社を集めていただいて、元気のなかった新興市場に風穴を開けてもらうことに期待したいですね。

--上場準備はいつごろから始めたのですか。

 2004年末に第三者割当増資をした際にベンチャーキャピタルともかかわっているので、上場はその時点で宿命付けられておりました。実際の準備にとりかかったのは2006年の後半からでした。

--上場先は株主との相談の上で決めたのですか。

 株主にどこへ上場するかは相談しておりません。我々がNEOに上場すると決め、主幹事証券の野村証券と主に相談して進めました。

--御社は今国内で最も勢いのある任天堂関連銘柄。NEOの第一号銘柄として理想的です。ジャスダック証券取引所および野村証券からの強い要請があったとの噂もあります。

 それは事実と異なります。彼らの間で強力な話題性を欲しがったことはあるかもしれませんが、我々は依頼されて決めたわけではなく、NEO市場の魅力に惹かれて決定致しました。

--2006年後半から上場準備を始めたとのことでしたが、NEOが発表されたのは2007年3月末でした。上場準備から発表までの間に上場先を決定していなかったということですか。

 上場準備期間の時ははっきりとどの新興市場に上場しようかは決まっておりませんでした。市場を決めようとしている時にちょうどNEOの発表がうまい具合にありましたので、もし発表のタイミングが数カ月ずれていたらNEOでの上場はなかったと思います。

-- NEOに上場すると社内に発表した時、反対する社員はいませんでしたか。

 特に反対はありませんでした。新興市場を単に知らなかったという理由もあったのかもしれませんが、役員の意思統一も早々にできました。

--「ライブドアショック」以降、特に新興市場のIT関連銘柄が低迷しています。2007年度の決算が明らかになる2008年夏ごろまで投資家たちの不信感は残りそうですが、このタイミングで上場した理由は何ですか。

 当社役員の監査役は3人が会計士、最高財務責任者は監査法人トーマツ出身です。会計・経理・財務的な監督は厳密に出来る体制をとっております。市場不振に対するアンチテーゼとして長く継続成長を実現できれば、我々にとっても勝算はあります。

日本企業であることの優位点

--御社は非常に日本的な専門技術を持った企業という側面が強い気がします。日本のIT市場復活の起爆剤は自分たちのような存在が担うとの意識はありますか。

 これまで、米国の市場には強いソフト会社はいくつもあったわけですが、冷静に分析すると、一見すると強そうですが、北米以外の市場やPC以外のコンシューマで弱かったりします。

 一方、日本のデバイス会社はコンシューマに強かったりしますので、うまく日本にいることの有利さを使ってビジネスを押し進めていきたいですね。

--任天堂というグローバルな企業と手を組むことで、意図せずワールドワイドなビジネスになっているという側面もあります。

 米国や英国にはもはやコンシューマエレクトロニクスの会社はほとんど残っていないわけですから、日本にいたことがうまく働いたと思っています。

 我々は「縁の下の力持ち」ということでデバイスの下支えをしている会社です。その分、さまざまなデバイスに当社の技術を入り込ませることで、着実に収益を上げていきたいと思います。

--ユビキタス・ネットワークの世界で御社はどこまでの役割を果たせると感じていますか。

 バックボーンが出来上がっていますので、さまざまな面白いことができると思っています。ただ、自分の回りの数百のデバイスが見えないうちに動いているのが理想なので、目に見えて意識されているうちはまだ十分な段階とは言えないでしょう。

 ホームネットワークでつながっている冷蔵庫の残り物で献立を立てるなどの例が近未来像としてよく使われておりますが、人間一人ひとりにデバイスが埋め込まれ、その日の体調を医者に送信し、メディカルチェックを受けるといったことも可能になるわけです。つまり、健康診断も不要になるかもしれません。

 ただ、可能性が無限にありますし、どう進むか分からない点も多いため、「5年後はこうなっている」といった明確なビジョンは申し上げられません。市場の動向を見ながら実績を積み重ね、修正が必要な部分は修正をしていくということも重要になるでしょう。

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