クリエイターを笑顔でまとめるロフトワークの名ディレクター

瀬井裕子(編集部)、写真:uga2007年11月02日 18時39分
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 インターネットでバーチャルなチームを組み、ウェブサイトや携帯電話のコンテンツ制作を手がける会社、ロフトワーク。その進行役を務め、優秀なディレクターだと噂の高い女性がいる。中田はるかさん。依頼主の意を汲んで適切なメンバーで作り上げるコンテンツは高評価。

 意志の強い表情を時々見せながらも常に笑顔の中田さんに、仕事への思いとプライベートについて聞いた。

依頼主とクリエイターを仲介する

 中田さんの仕事は、主にウェブ制作やSNS、携帯電話のアプリなど、コンテンツの制作管理。依頼主は「化粧品、アパレル、製薬、食品・・・いろいろです。面白ければ何でもやっちゃうという気持ちでやっていますね」。

 依頼される内容は、2週間程度で終わるものから半年程度かかる大きなプロジェクトまでさまざまだ。

 中田さんはまず、依頼主が求めるイメージを正確に聞き出す。時には、依頼される指示だけではなく「市場動向を見ながら、依頼主が気づいていないけれども良い案」の提案も必要だ。

 イメージが固まると、ロフトワークに登録しているイラストレーターやカメラマン、デザイナー、プログラマーなど合計8500人のクリエイター向けにメールを配信し、制作希望者を募る。希望者の中からチームを組み、メールでコミュニケーションを取りながらスケジュールを管理し、依頼主のイメージに合う制作物を提供する。

 「クリエイターと依頼主で直接やればいいじゃないかと、よく言われるんですよ。でも、ロフトワークが間に入ることで、締め切りや質を確保しているので安心していただけると思います」。クリエイターが良かれと思って工夫したことでも、依頼主のイメージと違うと思えば、きっぱり使わないのだという。

 そんな中田さんの一日は、メールに向かうところから始まる。

ある日の行動
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 まずはメールの確認。その後は、進行中のプロジェクトについて依頼主と打ち合わせ。

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 午後はメールへの対応を終えてから、発注先のクリエイターを選び、デザインを依頼する。クリエイター選びでは、登録者のデータベースを参考にするが、社内のディレクター同士で推薦し合うこともある。

 デザインと仕様を確認した後は、新規案件の企画書と見積りの対応。仕事は一時間ごとに次々変わる。その後、デザイナーへの指示書を作成。

 夕方から夜にかけて15分程度休憩をはさみ、また仕様書の作成。帰宅後は入浴や読書の時間にあてる。

お気に入りのグッズ
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 仕事の机は、事務所のレイアウト変更をしやすいように移動の簡単なものなのだという。机の上には文房具や資料が数多く、スッキリと整理されている。デザインを見るため、ノートパソコンの画面は大きい。

 通勤には、必ず本を持ち歩く。この日に持っていた『山椒魚戦争』は、父親に薦められたもの。「父がこれを読んでみれば?っていろいろ薦めてくれるんですよ」。売れ筋に関わらない独自の選書眼で『ぼくと1ルピーの神様』というインドの事情を絡めた小説などを薦められ、読んだ後は互いに感想を語り合うこともあるのだそう。中田さん自身は安部公房や恩田陸のファンなのだという。音楽や映画も好きで「ポップスでもロックでも聞きます」。

goods.jpg写真左から時計回りに、ノートと文庫本。携帯電話(W53T)、財布(KATHARINE HAMNETT)、カードケース(Vivienne Westwood)。

 小さい頃は宇宙飛行士になりたかったという中田さん。もともと機械は好きだった。PCの自作まではしなくとも、自然に使いこなし、今でもカスタマイズの必要なアプリケーションの作り込みなどはこなすという。

 IT業界で働くようになったきっかけは、SNSなどのウェブのサービスの広まりにいち早く興味を持ったこと。中田さんは大学の在学中からラジオの制作会社で働き番組制作に関わっていたが、転職を考えた時「IT業界が伸びることが明らかに見えていたので、確実なところに行きたいと思ったんですよ」という。ITの知識を必要としながらもクリエイティブに関わるロフトワークを知り「これはいいじゃない!」とすぐに決めた。

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 今では、レベルの高いものを作り上げる腕をかわれ、クリエイティブ・コモンズの母体となる非営利団体アイコモンズの活動を紹介する広報誌の表紙のイラストを任されている。優れたコンテンツをより広く流通させるクリエイティブ・コモンズの活動は、ロフトワークが会社として目指す方向にも合う大きな仕事だ。

 依頼主の思う通りに仕事が進まなかったこともあるが「最初は落ち込みますが、性格的にぐだぐだすることに飽きるんですよ。次は絶対に同じことはしないと思ったら、もう前に進みます」と、ニコっとこともなげに語った。


ロフトワーク
クリエイティブディレクター

中田はるか

日本大学芸術学部放送学科卒。在学中からラジオの制作会社に勤務、FM局を中心に番組制作に携る。退職後、株式会社ロフトワークに入社。コンテンツ開発、ウェブサイト制作、SNS立ち上げなど、来るもの拒まずのスタンスであらゆるプロジェクトのディレクションを手がける。着実なプロジェクト管理と卓越したクリエイティブのディレクションで社内外から高い評価を受けている。

取材を終えて

 笑顔がとってもチャーミングな女性でした。すべての言葉の最後にニコっと笑顔を向けられたように思います。自分の言葉が相手にどのように受け取られるか常に考えていることが伝わりますし、自分の趣味に引きずられないで依頼主のイメージを作り上げようというプロ意識の高さも感じました。意志の強い表情やこだわりは、これまでの成功してきた自信に裏付けられているのだろうと思います。多くの人に愛され、楽しみながら着実に仕事をしている雰囲気が伝わる素敵な女性です。

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