MicrosoftとBest Buyが故意に顧客を騙し、Microsoftが運営するMSNインターネットサービスに加入させ、同サービスのトライアル期間終了時に顧客に対し不正に料金を請求したとして訴えられている裁判で、米最高裁判所は米国時間10月15日、同訴訟の再審を拒否した。
第9巡回区連邦控訴裁判所は5月にMicrosoftとBest Buyに対する集団代表訴訟の継続を認めたが、その後、両社が最高裁に再審を求めていた。最高裁が(コメントを付すことなく)この件の再審を拒否したことで、同集団代表訴訟の継続が理論上可能になった。
同控訴裁判所の意見書(PDFファイル)によると、この訴訟は2003年に始まった。当時、MicrosoftとBest Buyが、総額2億ドルのマーケティング協定を通じて、企業による不正な金もうけを禁じる連邦法に違反したとして、カリフォルニア在住のJames Odom氏が両社を提訴した。この法律は、正確には威力脅迫及び腐敗組織に関する連邦法(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act:RICO)と呼ばれる。
Odom氏によると、MicrosoftとBest Buyは、MicrosoftがBest Buyのオンラインストアの宣伝を行う見返りに、Best Buyの従業員が、特定の製品を購入した客にMicrosoftのMSNインターネットアクセスサービスのトライアル版を配布することで合意していたという。Odom氏の訴状によると、Best Buyの従業員らは販売時にそれらのトライアル版CDをスキャンし、客からその理由を尋ねられたら、在庫管理のためと答えていたという。しかし実際には、それらの情報はMicrosoftに送られ、Microsoftは顧客の許可を得ることなく、トライアル期間のカウントを開始していた、とOdom氏は主張している。
多くの顧客がそのような扱いを受けており、(Microsoftの手法は)RICO法違反に当たる、とOdom氏は訴状の中で述べている。また、同訴訟に参加した別の女性によると、彼女は、あるBest Buyの従業員に無断でMSNのトライアルサービスに加入させられた挙句、トライアル期間の終了時にMSN利用料が一切返金されなかったという。Odom氏に訴状によると、一部の顧客はMicrosoftの関係者に連絡を取り、料金の請求について異議を唱えたが、同社は彼らに対し、料金請求についての異議はデビットカードあるいはクレジットカード発行会社に申し立てるよう指示したという。
Odom氏によると、被害に遭った顧客の中で、損失に対する「完全な補償」を受けた人は一人もいないという。同氏は、「完全な補償」の具体例として、不正に請求された料金、クレジットカードなどの諸費用、Microsoftが(客から不正に請求した料金を)保有していた間の利息、さらにアカウントのキャンセルや返金要求のために費やされた「時間、労力、費用」の見返りの全額返金を挙げている。
現在、ワシントン州裁判所でも同様の集団代表訴訟が行われている。
MicrosoftとBest Buyは、不正行為は一切行っていないと主張している。両社は、企業支援団体の米商工会議所の支援を受けた。商工会議所は、最高裁に法廷助言要約を提出し、第9巡回区控訴裁の判決を覆すよう求め、さもなければ米国経済に損害が及ぶ恐れがあると訴えた。
商工会議所は、MicrosoftとBest Buyが締結したような「ごく普通のマーケティング協定」にRICOを適用すべきではないとし、さらに、第9巡回区控訴裁の「不適切な」解釈の有効性を認めれば将来の事業提携を損ないかねないと指摘した。この裁判には「大金」がかかっている。というのは、仮にRICO違反となれば、民事訴訟での損害賠償額が3倍に膨らむ可能性があるからだ。
商工会議所のエグゼクティブバイスプレジデントであるRobin Conrad氏は9月に、「RICOは組織犯罪の防止を目的としており、合法的な企業に3倍もの損害賠償を支払わせるための道具ではない」とし、さらに「裁判所は、RICOが訴訟版核融合装置になるのを阻止すべきだ」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したも のです。海外CNET Networksの記事へ
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