欧州とベンチャー企業

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 「ベンチャー企業」ときくと「シリコンバレー」という地名が浮かぶほど、ITベンチャーの多くは米国で生まれている。一方、欧州発となると、GoogleやAmazonレベルのベンチャー企業はなかなかいない。eBayに買収されたSkype Technologies、MySQLぐらいだろうか。

 その理由はいろいろな角度から分析できるだろう。ここでは、人材と環境の2つを考えてみる。

 人材はどうだろうか?北欧や東欧を中心に、高等教育のレベルは高い。Linuxの父、Linus Torvalds氏はフィンランド出身だし、WWWを発案したTim Berners-Lee氏は英国だ。Alan Turing氏(英国)、John von Neumann氏(ハンガリー)などの名前を挙げれば、現在われわれが使っている土台技術の多くが欧州でうまれた(あるいは米国に渡った欧州人が関与した)のだとわかる。

 実際、優秀な人材を求める米国企業の多くは、ルーマニア、ハンガリーなどの東欧に注目している。多くの人が、コンピュータ科学、物理、数学などの分野で東欧の学生のレベルは米国より高いと認めている。あるポーランドの開発者はこれを、「共産時代がもたらしたメリット」と分析する。当時、教育は重要で、質は高かったという。

 だが、環境となると、「米国に大きく遅れをとっている」とVC(ベンチャーキャピタル)は口をそろえる。VCそのものの数はもちろん、地元VCのリスクをとりたくないという投資方針もあるようだ。また、手続きもややこしい。英国のVCによると、欧州で起業しようとすると、書類を提出する機関の数が米国のそれよりもはるかに多いという。欧州政府は、表向きは経済成長のために起業を支援するとしているが、実際はまだまだのようだ。

 話を聞いたVCらによると、大きな阻害要因は文化。欧州全体で、挑戦することを良しとしない、失敗をよしとしない雰囲気があるという。技術的には米国の学生と変わらないレベルだが、学生や若者は失敗を恐れ、挑戦しようとしない。たとえガッツがある人が出てきたとしても、環境で壁にぶつかる。たとえば、SkypeのNiklas Zennstrom氏は、「最初の1年は資金調達に苦労した」と何度も述べている。そこで、大西洋を渡る起業家も少なくないようだ。最近では、ブログで有名なフランス人Loic Le Meur氏が「(フランスは)起業家精神がなく、リスクをとらない文化」と言い残して米国に渡った。

 だが、状況は変わりつつある。インターネットにより優れた技術はすぐに認められるようになった。また、Skypeに刺激された若き開発者がたくさん出てきている、とVCらは見ている。

 環境も変化しそうだ。常に欧州のベンチャー環境に批判的だったSkypeのZennstrom氏は、Atomicoという投資会社を立ち上げ、ベンチャー育成に乗り出している。このような動きが奏功して、欧州発の世界レベルのベンチャー企業が増えていくかもしれない。

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