10月2日から開催されている電子部品や電子デバイスの展示会「CEATEC」。10月3日の基調講演では、ヤフーの代表取締役社長の井上雅博氏が登壇。同社が進める「Yahoo! Everywhere」構想の今後の展開について語った。
井上氏はまず、日本のブロードバンド世帯普及率が50%を突破したことについて触れ「(世帯普及率100%まで)あと2倍を切ったが、まだまだ伸びている」と説明。また、ブロードバンドの普及に伴い、動画などのリッチコンテンツなど、滞留時間の長いコンテンツが増えた結果、ページビュー(PV)をインターネット利用の指標にすることが難しくなってきたと説明し、「最近では利用時間を指標にする動きがある」と語った。
このネットの時間という指標で見ると、インターネット利用者の日常生活における1日のネット平均利用時間は約40分。井上氏は「今後はこの数字を伸ばしていきたい」と語り、その方法として、モバイルやゲーム機、カーナビなどさまざまなデバイスから開かれたネットへアクセスできるようにすることが重要だとした。
井上氏はここで「オープン」「ユーザーインターフェース(UI)最適化」「利用者中心」「シームレス」という4つのキーワードが今後重要になると語った。キャリアに閉じないオープンなマーケット、PCやモバイル、テレビなどデバイスに適したUIの採用、同じユーザーがPCやケータイなどさまざまなデバイスを作るため、どういう場合にどういうサービスが必要か利用者視点で考えること、そしてさまざまなデバイスを利用する際、デバイスごとに設定を行う必要のないことが大切だという。「言い古されている言葉だが、TPOが重要になる」(井上氏)。
PCやモバイルをはじめとしてテレビやカーナビといったデバイスからでもヤフーのサービスを利用できるようにするというYahoo! Everywhere構想の一端として、井上氏は講演の中で、ソニーの「PLAYSTATION 3」のインターフェースを利用したサービスや日産のカーナビ「CAR WINGS」で利用できるヤフーのコンテンツのデモを紹介。さらにシャープと共同でフルハイビジョンのAQUOS向けのサービス「Yahoo! HD」(仮称)を開始することを明らかにした。
Yahoo! HDはネットに接続できるAQUOS向けのサービスで、2007年度中でのサービス開始を予定している。新機種だけでなく、すでに発売中の AQUOS GXシリーズとRXシリーズでも利用可能なサービスで、HD対応テレビ向けにアルプス社がカスタマイズした地図の閲覧や、ソフトバンククリエイティブが提供する絵本コンテンツなど複数のコンテンツを、テレビのリモコンだけで操作できる独自インターフェースで提供する予定だ。家族での利用を前提としているため、Yahoo! IDを元にしたペアレンタルコントロールの仕組みなども検討されている。
基調講演後にヤフー事業推進本部デジタルホーム事業室室長の坂東浩之氏が説明したところによると、Yahoo! HDはシャープと半年前から話を進めてきたものだという。「PCではユーザーが能動的に情報を検索していくが、テレビでは家族など複数人のユーザーに対して、情報がパッケージされてユーザーに届く。いかにテレビ的な見せ方でありながらネットならではの双方向性を出すかという点に苦心した」と坂東氏は語る。
いくつかのコンテンツプロバイダに対してはHD化したコンテンツの提供についても相談しているが、「総じて協力的」(坂東氏)だという。ビジネス的には、単なるバナー広告ではなく、スポンサードコンテンツなども検討する。また、今回はAQUOSが独自に持つプラットフォームを利用しているが、他社のテレビに対しても「技術的な汎用性があると思っている」とコメントした。
井上氏は1年前のCEATECの会場でもYahoo! Everywhere構想とオープン化について講演を行っている。「この1年間で成果が出てきている。テレビやゲーム機、カーナビでのサービスは、ヤフー 1社でやっていたら、ここまでできなかった。これからいろいろやっていく中で、ほかの企業と協力していきたい」と井上氏は語り、今後はコンテンツ作成、技術情報の公開、広告ネットワークによるビジネスの拡大など、広くパートナーと提携し、同社の構想を進めていく構えであることを示した。
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