9月26日、東京大学で日本最大級のゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2007」(CEDEC)が開催された。オープニングではセガ代表取締役副社長の小口久雄氏が講演。テーマは、人間とその社会における「遊び」の本質とは何か、それをどうゲーム開発に活かしていくべきか、というものだった。
小口久雄氏は1984年にセガに入社し、20年以上にわたりゲーム制作畑を歩んできた人物。主にアーケードゲーム開発に携わり、キャラクター制作なども経験したことがあるという。「電脳戦機バーチャロン」などのタイトルを世に送り、今でも現役の開発マンだ。
小口氏は最初に、遊びが人間にとっていかに大切であるかを説く。一般的に、人間が生きるうえで最低限必要なのは衣・食・住とされるが、遊びがなければ生活はただ苦しいものであるとした。しかし、日本社会において遊ぶ行為はマイナスイメージに捉えられがちで、遊びに対し積極的でない現状が社会に痛みを与えていると嘆いた。
次に遊ぶという行為はすなわち楽しさの追求であると語る。そもそも楽しさとは人それぞれに違うものであり、酒、ギャンブル、勉強、仕事とさまざまな形がある。同時に、楽しいことは常に流動的かつ自由なものだ。おなかがすいている人間にとって食事は楽しみであるが、満腹の人間にはそうではない。つまり繰り返しを強要されると「飽きと慣れ」が起こり苦痛となるわけで、それはゲームに通じるものがあると説いた。
さらに、小口氏は人間のさまざまな欲求を満たしてくれるのがゲームであると位置づけた上で、その欲求を細かく分類して示した。生命維持のための五感的な欲求、飲食・睡眠・性欲といった動物が持つ本能的な欲求、生存のための闘争・逃避の欲求、さらに社会生活を営む中で発達した収集・ 育成・保存・構成などの高次元の欲求――である。中でも闘争・逃避の欲求はゲームとの相性が良く、戦闘要素を骨格にしたゲームが多い理由だと小口氏はいう。 一方、「どうぶつの森」「脳を鍛える大人のトレーニング」「倉庫番」など、必ずしも戦闘要素を組み入れていないゲームの例も示した。
小口氏は結論として、ゲーム開発者はまずゲームに落としこむ欲求の種類をよく整理してからゲームの方向性を決めるべきだとした。安易に戦闘要素を組み込まない方が、よりクリエイティビティが高い作品につながるのではないかとし、「楽しさを求める中には反社会的行為も含まれる」として破壊や暴力などより過激さを求める傾向にあるゲームへの危惧を表明、開発者には楽しさと倫理観のバランス感覚を失わないで欲しいと訴えた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?