実はNIKKOが松竹映画のプロモーションを手がけるのは今回が初めて。その分、力も入ったようだ。
「口コミを狙うために、報酬を支払ってブロガーに取り上げてもらうという手法もありますが、それだとブログに書かれるだけで二次、三次とは伝わらない。自分が信頼している人から直接聞いたことが口コミになるんです。その点で、既存の方法に対するチャレンジという気持ちもありました」(宮川氏)
モバイルサイトに誘導するQRコードも工夫した。特殊なQRコードのデザインを手がけるIT DeSignと組み、QRコードの中に「伝染歌」という文字を入れ込んだのだ。
「文字を入れることで、本当に読み取れるんだろうかと試したくなるようにしました。図版の候補はいくつかありましたが、映画のタイトルの認知度を高めるためにも『伝染歌』という文字を入れました」(宮川氏)
ただし、誰でも利用するトイレを広告媒体にすることに対しては、商業施設からの反対もあったという。特にホラー映画の宣伝は自分の店に来たお客さんを驚かせることになるため、交渉しても断られることも多かったようだ。
「恋愛映画だったらいいんだけど、と言われました」(宮川氏)
NIKKOとしては、広告に見えてしまっては口コミ効果が期待できないため、できるだけ見た人を驚かせたいという気持ちがあった。しかし商業施設からは「本当にお客さんが驚いてしまうようなものはだめ」「おどろおどろしいものはだめ」という要望があり、そのバランスに苦労したという。
結局、トイレをジャックできたのは池袋のP´パルコや新宿アルタなど約30店舗。ただし、それ以外にもおよそ200の店舗に、QRコードの入ったステッカーを置いた。ステッカーには「決してアクセスしないで下さい。」という文字を入れ、逆にアクセスしたくなるようにした。
「これを女子高生に見せたところ、『逆にアクセスしたくなる。だって、ダメと言われたらしたくなる年頃だもん』と言われましたよ(笑)」(宮川氏)
これらのプロモーションは確実に効果があったようだ。松竹の清宮氏によれば「プロモーションを始めた7月頃から、伝染歌に関するブログやSNSでの書き込みが増えた」という。実際にトイレを見て驚いた人が書き込んだほか、さまざまなメディアに取り上げられたことで注目が集まったようだ。実際、ブログやSNSの日記を見てみると、たまたま商業施設に入って“恐怖トイレ”に入った人が「すんげ〜こわかった・・・。」と書いたものや、新聞や雑誌などで取り上げられている記事を見て「興味深いので体験してこよっと」と書いているものなどがあった。
今回のプロモーションは、ケータイとリアルのプロモーションをうまく組み合わせた事例と言えるだろう。NIKKOはこれまでPC向けのインターネットプロモーションが主体だったが、「PCは屋内で、机の前に座っているときに限られるが、ケータイなら屋外でもいつでも使える。PCに比べてケータイは生活者との接点が多く、生活の流れに沿ったプロモーションができる。屋外広告と組み合わせたクロスメディア展開にはケータイのほうが相性がいい」と宮川氏は話す。
もっとも、何でもケータイを利用すればいいというわけではない。年齢層によってはケータイをほとんど使わない人も多いからだ。松竹の清宮氏は「たとえば『釣りバカ日誌』などの映画でケータイを使うのは難しい」とした上で、若者向けのケータイを使った斬新な企画があれば使っていきたいと話した。
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