2006年11月。湘南で学生とIT関連企業社員という二足のわらじを履いていた小林慶太氏は、2週間ぶりに連絡してきた知人の報告に驚いた。
「できましたよ」
連絡してきたのは福島工業高等専門学校(高専)の大澤昇平氏。小林氏は2週間前、大澤氏から「開発した新型検索エンジンを事業化したい」と相談を受け、「事業化にはもう1つの対となるサービスが必要」とアドバイスをしていたばかり。
開発に2〜3カ月はかかるだろうと考えていたサービスがすでに、しかも十二分な完成度で仕上がっている──。
「起業か就職か」と思い悩んでいた小林氏は、大澤氏の技術力に背中を押されて起業を決意。2007年5月、Curioを設立した。
Curioの主力サービスは「Swimmie(スイミー)」と呼ばれるソーシャルブックマークサービス。慶應義塾大学在籍中、KLabで携帯電話向けサイトのプロデューサーを2年程度経験していた小林氏だが、意外にも初の起業に選んだのは携帯電話関連サービスではなく、PCベースのWeb 2.0的なサービスだった。
将来的には携帯電話向けサービスも提供する計画ではあるが、Curioは向こう1年間、このSwimmieを主力に事業展開する。
小林氏が未知の領域で初めての起業を試みたのは、冒頭の2006年11月、大澤氏との出会いの場で目にしたあるサービスがきっかけとなった。
初対面での名刺交換後、間もなく大澤氏は自身で開発した検索エンジン「netplant (ネットプラント)」を披露し、小林氏からの意見を求めた。
netplantはそれぞれのサイトにタグ付けし、そのサイトの内容に合致したタグを検索することで、極力ノイズを抑えて精度の高い検索結果を利用者に提供しようというサービスだ。従来のページランクによる検索と比べ、より人間との会話に近い検索結果を表示できるようになる。意味付けされたページで今までにないさまざまなサービスが可能になる「セマンティックウェブ」の方向性を意識したサービスと言えよう。いわば「セマンティック検索」と呼べるサービスだ。
しかし、小林氏はすぐに問題点を指摘した。検索をする上で重要となるタグのデータ収集プランが甘かったためだ。方法論が優れていても、それを実現に結び付ける基盤が強固なものでなければ、サービスの事業化も望めない。
そこで小林氏はその場で、ブラウザに組み込むタグベースでのソーシャルブックマークサービスを提供し、そこからデータを収集すればいいのではないかと助言。さらに話を具体的に詰め、「FireFox」の追加機能として新たなブックマークサービスの開発を勧めた。
この出会いの場でやり取りされて生まれたソーシャルブックマークサービスが、Swimmieである。
これをきっかけに、小林氏は大澤氏の技術力を、大澤氏は小林氏の的確で鋭い判断力を互いが認め合い、Curioを設立。2人は次世代検索エンジンの本格展開に向けた一歩を踏み出した。
「はてなのように、Curioだったら何か面白いサービスを提供してくれるに違いない、と思われるような会社になりたいんです」(大澤氏)
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