大手IT(情報技術)企業の海外企業買収が相次いでいる。富士通による仏情報サービス会社GFIインフォマティークの敵対的TOB(株式公開買い付け)の株式買い付けが8日終了。現地証券取引所や仏金融当局などの集計、審査を経て中旬にも結果が発表されるが、成功すれば日系IT企業による海外企業買収に拍車がかかる可能性もある。
富士通は昨年12月には独システム大手TDSを買収。NECが先月、米ソフト開発企業を、日立製作所も4月以降に英国、米国で相次ぎITコンサルティング会社などを買収した。
ここにきてIT各社が海外買収を積極化させているのは、日本での事業拡大に限界を感じているからだ。
「世界のIT市場に占める日本の割合はわずか10%に過ぎず、海外展開強化が不可欠」(富士通の黒川博昭社長)、「NECの売上高の7割は日本市場でのもの。海外に打って出る必要がある」(NECの矢野薫社長)と各社は、海外での事業拡大に力を入れる構えだ。
富士通によると、IT市場の成長率は日本が今後3年間の平均で1・9%にとどまるのに対し、海外では軒並み10%前後に達するとみられている。このため、海外の成長市場を素早く取り込むには、人材と顧客を一気に獲得できる企業買収が最も効率的な手段と日系各社には映っている。
富士通の黒川社長は「海外子会社には、条件がそろえば積極的に企業買収を進めるよう指示している」と話す。
NECは今年に入り、海外企業買収戦略を練る「ITソリューショングローバル戦略本部」を新設。7月10日の経営方針説明会で矢野社長は「複数の企業買収の検討に入っている」とし、買収戦略を加速させる考えを示した。
≪緩急織り交ぜ≫
各社の買収戦略には、攻めの半面、慎重さもみえる。富士通のGFIへのTOBでは、買収成功に向け、株式の買い付け価格を引き上げることもできたはずだが、富士通はしなかった。「強引に支配して、社員がやめたり、顧客が離れれば意味がない」(黒川社長)との判断から、無理な買収は行わない姿勢だ。
背景には、過去の買収での失敗や、買収で成果が得られなければ経営に影響を及ぼす懸念があるとみられる。富士通は90年代に買収した海外企業が不振に陥り、01年度に約3800億円の最終赤字計上を余儀なくされた。NECも、半導体分野の不振に見舞われており、無理な投資が本体の経営を圧迫しかねない。
このため今後、各社の海外企業買収は、市場動向をにらみながら、緩急織り交ぜたものとなりそうだ。
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