松下電器、株価年初来安値更新の背景と今後

 松下電器産業の株価が年初来安値を更新する事態になっている。同社が7月24日に明らかにした2008年3月期における業績見通しの下方修正がきっかけだ。東京株式相場全体が急落基調となる中で、果たしてこの株価の下落は今後の同社の業績推移を正確に反映したものなのか。

 松下電器は7月24日、25日の2008年3月期の第1四半期(4〜6月)の決算発表を翌日に控えて、2008年3月期の連結決算(米国会計基準)予想の下方修正を発表した。売上高を従来予想の9兆2500億円から8兆7800億円(前期比4%減)へ、営業利益5000億円を4770億円(同4%減)へ、純利益2500億円を2460億円(同13%増)になる見通しとしている。

 業績下方修正の理由は、連結子会社だった日本ビクターが実施する第三者割当増資(払込日は8月10日)を受け、同社への出資比率が52.4%から36.8%へ低下し、7〜9月期以降は子会社から持ち分法適用会社となるため、算入される金額が減少されるためだ。

 表面的には小幅ながら通期業績の下方修正ということになるが、実際には関係会社への出資比率が変更になるだけで、同社の実際の業績自体に何ら変化はなく、「株価面から見れば中立要因」(市場関係者)との判断が一般的だ。

 さらに、同社は25日に第1四半期の連結決算を発表し、売上高2兆2395億円(前年同期比5%増)、営業利益738億円(同13%増)、税引き前利益839億円(同11%増)、純利益393億円(同10%増)と順調な推移となった。

 AV機器部門ではPDP(プラズマディスプレイテレビ)は伸び悩んだものの、デジタルカメラ、DVDレコーダーが堅調な伸びを示している。さらに、通信・情報機器では、カーエレクトロニクス機器などが順調な成長をみせ、日本ビクター以外の部門はすべて増収を維持した。また、想定為替レートが、1ドル=118円、1ユーロ=157円だったことから、実際の対ドルや対ユーロの円相場が円安に推移したことによる為替差益も寄与している。

 第2四半期以降の業績について市場関係者は「第1四半期の業績は、会社側の期初予想(正式公表はしていない)を上回っており、その分の上方修正は先送りされている。6月以降米国市場で42型のPDPが本格発売され、滑り出しは好調な推移となっている。今後、下期にかけてもPDPの回復が順調に軌道に乗れば、今回の下方修正が、一転上方修正となる可能性も残されている」としている。

 同社が日本ビクターへの出資比率減少に伴う業績下方修正を発表したタイミングが、米国株式相場の急落と重なったこともあり、混乱のなかで「下方修正」というイメージだけが先行し、「とりあえず売っておこう」という市場参加者の売却が先行し、年初来安値を大きく割り込む急落となった模様だ。

 また、外国人投資家の日本株売り越しが目立つ中で、外国人投資家の注目度が非常に高い国際優良銘柄の代表株に対して「今後も外国人投資家からの売りが出るのではないか」との思惑を先取りして売り急ぐ動きもみられた。信用売り残高が多く需給的には短期間での急上昇は見込めないものの、連結PERがすでに20倍水準まで低下していることもあり、中期的には現在の2100円レベルから2500円程度までの戻りは十分期待できそうだ。

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