英国放送協会(BBC)は7月27日、オンデマンドTV配信サービス「BBC iPlayer」ベータサービスを開始した。BBCがiPlayerの概要と提供予定を発表したのは6月27日、それからベータサービスがスタートするまでの1ヶ月間、iPlayerは英国のインターネット界をにぎわした。
まずはiPlayerについてざっと説明すると、iPlayerは、放映後1週間以内のTV番組を“キャッチアップ”できるBBCのオンデマンドTVサービス。PtoP技術を利用しており、約30分の番組をダウンロードするのに約30分の時間を要するという。コンテンツにはDRMが付いており、ダウンロードしたTV番組は30日間有効。視聴後、番組は自動的に削除され、一度見始めた番組も1週間経過すると自動削除される。当初、約400時間分のTV番組を提供、この中には人気ドラマ「Doctor Who」などが含まれているようだ。
BBCにとってiPlayerは重要だ。YouTubeなどの動画共有サイトが人気を集めており、インターネットTV「Joost」のローンチも控えている。インターネットの影響力は大きくなっており、TV離れを指摘する声も出てきている。BBCはオンライン戦略「Creative Future」を打ち立てており、その中核を握るのがiPlayerとなる。同社のディレクター・ゼネラル、Mark Thompson氏は、iPlayerを「1960年代のカラーTV登場以来の事件」と述べている。
だがこの1ヶ月、iPlayer周りで起きた騒ぎとは、iPlayerの機能ではない。互換性だ。
現時点では、iPlayerがサポートするのは「Windows XP SP2」のみ。BBCでは、「Windows Vista」「Mac OS」のサポートを今年秋に予定しているが、もちろんOSはこれだけではない。オープンソースもある。商用サービスならともかく、BBCは国営、つまり公共サービスだ。そこで、これを問題視したオープンソース支援者らは、「Windowsのみをサポートしている」と英首相官邸Webサイトにて電子陳情(eぺティション)を開始、瞬く間に1万以上の署名が寄せられた。
これに合わせ、英国のオープンソース団体、Open Source Consortium(OSC)もWebサイトで公式にBBCを非難した。今年1月にも苦情を申し立てたというOSC会長は、苦情を欧州連合に上げることも示唆したようだ。
その成果あってか、BBCの独立管理機関BBC TrustはiPlayer開始直前の7月24日、OSCと会合を持った。ここでBBC Trustはプラットフォーム中立性を強調し、「妥当な期間内にプラットフォーム中立性が実現できることがiPlayer承認の条件だった。今後BBCの成果をチェックしていく」と回答したようだ。一方のOSC側は、iPlayerのオープンソースソリューションの開発を申し出たという。
それでも、プロプライエタリソフトのインストールを強制することに反論する声、DRMフリーを要求する声もある。また、XPユーザーの中からは、インストールに問題があった、などの報告が上がっているようで、BBCは当面の間、対応に忙しくなりそうだ。
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