企業連携の“win-win”には必然の流れあり - (page 3)

勝屋氏:河端さんはもともと大和証券におられましたが、今の事業を始めようと思ったきっかけは何ですか。

河端氏:学生の頃、アメリカに1年間留学していて、当時はジャパン・アズ・ナンバー1でどうして日本のメーカーがすごいのか教えてくれと言われるような時代でした。でも、アメリカから帰ってきて証券会社に就職した頃は株もとっくに暴落していて、日本の経営者の誰に聞いても景気悪いと言う時代になっていました。

 逆にその頃、大和証券内の外国株式部はすごく元気がよかったんです。オラクルを買え、シスコを買え、マイクロソフトを買えと、毎日のように言ってくるわけです。ニューヨークダウが1万ドルくらい上がった時期ですね。その中にネットスケープもあって、ナスダックに上場して毎日株価が上がっていました。

 その時に日本にもこういう会社が生まれないといけないなと思ったんですよね。それがベンチャーに興味を持ったキッカケです。

 その後、会社を辞めて小売りの手伝いをしたりしたこともあったんですが、「待ち」の仕事はやっぱり面白くないと思って自分の好きなことをやろうと決心しました。最初はホームページの制作をする会社で働いたんですが、やっぱり楽しいし可能性は感じましたね。それで半年後に会社を作ったんです。会社を作ってからビジネスプランを考えたという感じで、最終的に今のアフィリエイトに行き着きました。

勝屋氏:投資にあたって、福岡さんの判断基準を教えてください。

福岡氏:ヒト、モノ、カネの視点は冷静に分析しますが、加えて、運、縁、勘というような「流れ」を大切にしています。オプトとその会社が出会うことが良い流れかどうか、その経営者の運が良いかどうか、今回の案件に必然性を感じるかどうか、そういったことを考えます。良い案件というのは、振り返れば必ず必然性があると思っています。

勝屋氏:河端さんは、ベンチャーキャピタルとの付き合い方や事業会社との距離の取り方など、何か一定のお考えなどはありますか。

河端氏:我々が当時必要なものはお金ではなかったんです。事業をどう成長させていくかが重要で、そのためのパートナーを欲していたわけです。ですからベンチャーキャピタルが良いとか悪いとかではなく、その時たまたま我々が求めていたものが事業パートナーで、オプトが信頼できる相手だったということですね。

勝屋氏:福岡さんは人脈もたくさんお持ちですが、案件はどうやって見つけてくるんですか。

福岡氏:オプトが必要とする事業に関しては、素直に探します。そして、基本的な探し方は、先輩、知人、友人を頼ります。魅力的な会社や人に魅力的な会社や人が集まりますので、魅力的な人と会い続けていれば、良い案件に出会う可能性が高くなると思っています。他力本願です、はい(笑)。

 一方、持ち込まれた事業を、無理やり、オプトに必要な事業に仕上げようとすると無理が生まれます。よって、昨年は、オプトが必要としているものの、提携先が見つからない事業に関しては、自分たちで子会社を立ち上げました。オプトを支えてくれている方々からの「他力」とオプトの努力による「自力」を噛み合わせることで、オプトらしい投資事業を立ち上げたいと思っています。

勝屋氏:河端さんは、インタースペースを今後どうしていきたいと思ってますか。

河端氏:世の中に対してきちんと価値を生むビジネスにしたいですね。儲かりそうだからとりあえずやろうというのではなくて、自分たちにとって必然性があるものをきちんと決めてやる。その結果、消費者はもちろん、代理店の方、当社の社員など、そのビジネスに関わるすべての人が幸せになれる会社にしていきたいですね。

対談での氣づき 〜 勝屋 久(IBM Venture Capital Group)

 双方の戦略的なアライアンスの価値が明確でかつリアルのビジネス結果もしっかりと出ており、コーポレートベンチャーの視点でとても良いビジネスケースと感じた。

 この成功の背景に、オプトの福岡 裕高さんの力が大きい。福岡さんは一つの理想のコーポレートベンチャー像かもしれない。この対談をとおして、福岡さんの素晴らしさに氣づいたことがあった。それはコーポレートベンチャーのプロとして、下の大切な3つの資質があることだ。

  • ?業界を知り尽くす。業界の経験がある。
  • ?会社の戦略・リソースを正確につかんでいる。
  • ?人として魅力的である。
業界を知り尽くし、業界の経験が豊富であれば洞察力、アライアンス候補の目利き・勘所、Win-Winを現実化するアイデア・実行計画の立案できる。

 会社の戦略・リソースを正確につかんでいれば、常になにが自社で足りないかをしっかり把握できる。これは言葉で書くのは簡単だが、実際に描くことは容易くない。

 人として魅力的であれば、アライアンス先企業、社内の良き相談相手になれる。そして素晴らしい出会い(アライアンス候補)に恵まれる。まさに福岡さんは謙虚な姿勢で常に人と向き合っている。(業界を長く経験していると、ついつい上から目線で相手と話してしまいがちである。実は福岡さんも昔はそうだったらしい。)また、実際に現場との調整などで汗をかき、関係する人達と分かちあうことで信頼関係ができ、結果として会社対会社の確固たる信頼関係がうまれる。

 また、福岡さんは謙虚な姿勢で人と向き合い福岡さんと河端さんと話をしていて、僕自身もリアルに学んだことが多かった。もはや1社だけでは市場・お客様を満足させることは難しい時代である。そういう時代だからこそ、企業間連携は大切で、コーポレートベンチャー戦略や事業会社〜ベンチャー企業のアライアンスは有効な手段の一つと考えられる。そういった意味で福岡さんのコーポレートベンチャーとしての活動と功績はとても意義のあることである。将来より多くの事業会社・ベンチャー企業から、オプト〜インタースペースのような素晴らしいアライアンスがうまれることを願う。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation, Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、経済産業省「Vivid Software Vision研究会」委員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)、富山県立大学MOTの講師などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」を手掛けている。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

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