有力企業の成功ストーリーを支えてきた技術者たちの実像を探る本企画。第2回目は優秀なプログラマーであると同時に、世界展開を視野に入れたブラウザを武器に経営するLunascape代表取締役CEOの近藤秀和氏が語る。
2001年の公開以来、700万ダウンロードを達成している国産タブブラウザソフト「Lunascape」。学生時代に同ブラウザを独自に開発した近藤氏によって率いられているLunascapeは、名前からも分かるように、Lunascapeの開発•改良を事業の中心に据えたベンチャーだ。
近藤氏は大学卒業後、1年ほどソニーに勤めるが、「みんなが楽しく仕事をしながら、世の中を変えていく組織をつくりたくて」、2004年に同社を立ち上げた。
「ブラウザは、インターネットの世界を最も変えられるツールです。マーケットもとにかく広い。世界のブラウザの10%をシェアしているということは、インターネットのトラフィックの10%をコントロールできるということです。ウェブサイトに100万人の閲覧者がいるということと、ブラウザが100万人のユーザーを持っているということは、全然次元の違う話なんです。
GoogleGearなど、ここのところ再びブラウザが進化し始めています。ブラウザが変わると、これまでのウェブの常識が通用しなくなる。大手ポータルサイトの仕組みなども全部無効化されてしまうんです。我々はそこをつくりだしていける側にいます」
Lunascapeの一番の優位性は、やはりタブを開くときの速度や軽さに現れる。「3〜4年ずっと研究しているので、そこでは負けない自信がある」のだ。そもそも、近藤氏がブラウザの可能性に気付いたのは、学生時代の2001年だったという。Internet Explorer(IE)がNetscapeとの争いに圧勝して、圧倒的なシェアを獲得していた頃だ。
「Lunascapeを発表した2001年当時は、みんなブラウザの開発はあきらめて、ブラウザの内側でどうやるかを考えていた時期でした。そういう状況だったので、2002年にはすでに、全ブラウザのなかで、2〜3番目のシェアになったんです。
しかも、タブブラウザというコンセプトが回り回って、FirefoxやIEも最終的にはタブを採用するようになった。タブそのものは私の発想ではないのですが、自分のアイデアの一部が世界中に伝わって、何十億人というネットユーザーの利用手順に影響を与えたんです。
それまでは自分が考えていたことが世界を変えられるなんて思っていなかったんですが、このことで、世界がすごく小さく見えるようになったんですね。”地球上にはたった60億人しか人間がいないんだ!”と思えるようになったんです」
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