「ソフトウェア版のソニーやAppleを目指して行きたい」と近藤氏が述べるように、「Lunascape」は、デザイン的なクールさや技術の斬新さを備えている。しかし、その一方で、初心者でも簡単に使いこなせるような、汎用性も追求されているのだ。
「古い言葉ですが、日本国内には明確なデジタルデバイドがあります。日本では、IT技術の進化を追いかけている人は1000万人ぐらいで、それ以外の人はどんどん取り残されています。ヤフーの利用率が 67%ぐらいで、グーグルの利用率となると、8.9%しかいません。我々としては、『CNET Japan』を読んでいる人と読んでいない人のデバイドをなくしたいんです(笑)。アメリカには、ネットに詳しい40〜50代の中年男性がたくさんいます。Lunascapeというブラウザを利用してもらうことで、できるだけ手軽にインターネットを利用してもらいたいんです」
近藤氏が起業したのは2004年。プログラマーが経営者となるケースが、まだ日本ではあまりなかった時代だ。
「Google創業者のSergey Brin氏とLarry Page氏が代表的ですが、アメリカではすでに当たり前でしたよね。スタンフォード大学出身のIT企業経営者がとても多い。日本はまだまだそういった人が少ないです。でも、自分自身、実際やってみると、プロダクトを出すという点でプログラミングと経営って似ていることがわかったんです。コンピュータ言語を学ぶのと同じ感覚で、財務やマーケティングを学びました」
Lunascapeの社員数は約20人。平均年齢は30歳弱である。半分以上がエンジニアで、今後は必要に応じて、規模を大きくしていきたいとのこと。ベンチャースピリットがあって、技術のある人や、面白い発想を持っている人が実力を発揮していける環境づくりを心がけている。
「まずは、ベンチャースピリットがないと、やっていけないと思います。ネットの世界は、変化が早いので、これでいいと思っていた手法が変わることも日常茶飯事です。
また、ソフトウェアの開発は、地道な作業の積み重ねです。F1の世界と同じように、起動速度が0.01秒早くなっただけでも、すごく大きな前進なんです。
それと、ブラウザに不具合は決してあってはならない。特にOSで影響を与えるような不具合は大変なことになりますから、慎重にテストをしています。モチベーションですか? そもそもブラウザで戦うという時点で無茶な話なので、そこにロマンがあるんじゃないかと(笑)」
会社の方向性は、ブラウザ業界でシェアを拡大することだという。そのためにまずはIPOを目指している。
「自分たちがつくったものを、何十万人の人に使ってもらって、最終的には世の中が平和になればいいと思っています。その一方で、ブラウザ開発で戦って行くためには、体力がないとやっていけないので、会社組織としても基盤をしっかりしていきたいですね」
ベンチャー産業における社員の流動性について、「社員がすぐ辞めてしまうのは、その会社に魅力がないから」と言いきる近藤氏。地道な開発と堅実な経営。この2つが、ブラウザというソフトに込められた壮大な理念を同社が実現させるための両輪となっている。
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