デザインから見るデジタルプロダクツ--第8回:富士通「FMV-BIBLO LOOX Uシリーズ」 - (page 2)

インタビュー・文:木村早苗2007年06月29日 16時18分

DNAをベースに製品化へと落とし込む

益山 DNAをベースにすることで、サイズ感も自然と決まりました。横幅は立った状態で両手で持って親指が届くサイズ。キーボードはそこに搭載できる最大限かつ両手で打てるサイズということで、14mmピッチになりました。

 LOOX Uは、通常のオープン状態、液晶を反転したタブレットPC、縦型などいろいろな使い方を提案するPCでしたので、フォルムを決める時は、特に操作性を重んじました。液晶の下端を思い切ってカットしたのもそのためです。

 こうすれば親指が楽に入って操作領域が広くできるし、フタを閉じるとカット面が過去のPCにはない変わったラインとして際立つ。そこをキャラクターラインとして、デザイン全体に落とし込みました。つまり、操作性のためにカットしたものがデザインの基本となっているので、ムダなラインを1本も作らずに仕上げることができました。

プロトタイプ アドバンスデザイン以降に作成されたプロトタイプデザイン。画像右のものはサイズ感やデザイン的イメージがほぼLOOX Uに直結している

--横から見たデザインも印象的ですよね。

益山  そうですね。横からみたラインもかなりこだわりました。デザインコンセプトとして「スピード感」とか「未来感」というキーワードを念頭においていたのですが、そういったスペーシーな雰囲気に上手く落とし込めたと思っています。

 カラーリングは白を基調にして、ライン部分に黒を使う配色にしたんですが、強いコントラストを持たせることによってラインの美しさも際立ちました。このライン、直線が少なく、タテヨコ斜めにデザインされているのですが、その辺りの雰囲気から、デザインチームでは開発段階で「スパイダー」って呼ばれていたんですよ。

 ウェブ上で検索エンジンプログラムのことを「スパイダープログラム」って呼びますよね。そんな風に情報を次々と集めていくPCという意味を持たせる上でも良かったと思っています。

--その辺りがアイデアソースになっているんですか。

益山 コンセプトとしてはそうですね。ビジュアル的には、スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」かな。あの宇宙船内の真っ白な感じとか、すごく未来っぽいですよね。

ポイントをヒンジに定めて作り出したキャラクターライン

木村 片手で持てるPC、立ったままでも両手で操作できるPCってすごく魅力的なキーワードですけど、実際デザインに落とし込むには、使い勝手と見た目の美しさを両立させるのがすごく難しいんです。

 いくつか試作を重ねる内に、両手の親指で操作する重要性に気づいたんです。ここに切り込みを入れることでグっと操作性がよくなるんですね。その時にLOOX Uのポイントはヒンジ部分だと。本来デザインするなら直線にしたい部分ですが、あえてデザイン的デメリットをキャラクターラインとして捉えることで、印象的なデザインになったと思っています。

 またヒンジ部分の両サイドにポインティングデバイスやクリックボタンを振り分けて配置することで、操作を広げていくという「スパイダー」のメタファーにもなりました。

--なるほど、ヒンジ部にボタンがあることで操作性の向上やキャラクター性の強調ができるんですね。

益山 認識もしやすいですからね。ただ、ポインティングデバイスやスクロール、左右クリック、スピーカー、ライトなどの機能がヒンジ部に集約されているだけに、設計は大変だったと思います。

 ラインのデザインもわれわれが初期に出したイメージ画像とほとんど同じで、アイデアをかなり忠実に具現化してもらえました。実は下側を切ると液晶の角が入りづらくなったり面倒な部分が増えるんですけど。

--具体的な形になるまでにどれくらい時間がかかったんですか?

木村 出発はアドバンスデザインですから、そこから考えると約2年間。製品化に向けて具体的に動き出したのが2006年9月頃だったので、約半年ちょっとですね。

LOOX Uデザイン ホワイト×ブラックの強い配色でラインを際立たせ、横から見ても美しいデザイン(左)、ヒンジ部に設けられたクリックボタンやポインティングデバイス。両手で操作した時に大変使いやすい(右)

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