5月末、Googleの最高経営責任者(CEO)であるEric E. Schmidt氏が韓国を訪れた。今回は講演のためにやって来た同氏だが、その講演におけるメインの1つとなったのは、Google韓国版だけに適用されている新しいUIだ。
通常Googleのメインページは、ロゴの下にキーワード入力欄などが配置されたシンプルなものだが、韓国語版のUIでは利用者がもっとも多く利用する7種類のサービス(Gmail、トーク、カレンダー、ノートブック、ツールバー、デスクトップ検索、Picasa)をボタン形式で配している。さらにキーワード入力欄上の「イメージ」「ニュース」といった検索オプションもアイコン化されている。
これは韓国ユーザーからの意見を最大限反映させることで完成させたものだという。すばやいサイトローディングのためデザインのシンプルさは相変わらずであるが、アイコン表示にしたことで華やかな印象を受け、1つ1つの機能が目に飛び込んできやすくもある。
ただし新UI以外の講演内容は、具体性に欠けていた。質疑応答で投げかけられた「韓国市場進出による効果と、韓国企業にとってのメリットは?」との質問に対しても、韓国ユーザーへのさらなるサービス向上と、韓国企業による海外市場開拓への道が開かれる、といったコメントしか行っていない。
またGoogleにおける有害情報などのフィルタリングが、韓国企業より不徹底であることが問題視されていることについては、韓国政府との協力により解決していくと述べるのみにとどまったほか、YouTube買収のような、今後の大型M&A計画についても、否定はしなかったもののはっきりと言及することも避けた。そのためUI発表以外は物足りなかったとの意見もある。
ところで今回の講演では、Schmidt氏が思わず困惑の表情を浮かべるという一幕もあった。それはソン・ハクキュ前京畿道知事からの、予想外の鋭い質問を受けてのことだった。
ソン氏の質問を要約すると「インターネットは個人のニーズに合わせた、多様な恩恵を受けることができるはずのものである。しかしGoogleのような巨大ポータルにより、ここで探せなかったり制限されたりする情報への接触が不可能となる可能性もある。巨大企業により1人1人が恩恵を受けられるはずの民主主義が歪曲されているのではないか」というものだ。
これに対し、Schmidt氏は「多くの批判論者が否定的な未来を語っているが、すべての道具は賢明な人たちによって利用されることで発展していく。これによりより良い世界が作られていくだろう。ネットユーザーが情報をチェックしこれを共有すれば、世界はもっと透明になるのであり、大勢が一挙手一投足を見守る政治家としては、今後もっと大変になっていくのでは」と述べた。
さらに同氏は「情報が多いほど牽制や均衡が生じるもの。インターネットは世界の民主主義の助けとなるものだ」と続けた。
ところで今回Schmidt氏は多くの企業の経営陣や政府関係者とも会い、今後の協力についての話し合いも行っている。企業ではSamsung電子、SK Telecom、Daum Communicationといったそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
話し合いの内容については明らかにされていないが、Samsung電子やSK Telecomとはモバイルサービスについて、Daum Communicationとは動画関連のサービスについて、それぞれ協議したと推測されている。
また政府とはプライバシー侵害や著作権、個人情報保護など法律関連に言及したと考えられる。Googleの韓国法人は最近、アダルト関連などのキーワードについて、検索の際ユーザーが成人かどうかを認証するシステムを適用する方針を発表している。韓国ポータルにおいては当然ともなっているこの措置を、Googleでも取り入れようと韓国政府との話し合いを行ってきていたのだ。
韓国への本格進出からまだ1年も経っていないGoogle。Naverなど大手ポータルにはまだまだ及ばないものの、他企業との提携関係は順調なようで、実際にSchmidt氏も韓国企業との提携をさらに積極化すると述べている。いくつかは2007年中にその成果も見られると予測されている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス