ベンチャー企業、特に有志によって立ち上げられた創業ベンチャーにとっては、資金繰りというのは常についてまわる問題です。
この資金繰りというものは、甘くみると非常に危険な数値管理であり、時期を見誤ると取り返しのつかないことにもなりかねません。また、資金繰りというのは、通帳を眺めているだけでは全く把握できるものではありません。
そこで簡易ではありますが、如何なる管理をすればよいのかを、具体的なサンプルとともにまとめたいと思います。
財務諸表というのは、実際の資金の流れと連動しているようでいて、その感覚を狂わすものも盛り込まれています。
仮に損益計算書(P/L)ベースで利益が出ていたとしても、売掛金が来月入ってくる予定だったとしても、また、買掛金が少なかったとしても、安心できるものでしょうか──。
例えば、在庫を購入したとしてもそれを他勘定に振り替えることで、一見、月次収益に影響ないように見えることもしばしばあります。ただ、ここが落とし穴です。その他勘定されたもののお金もようようと流出していることがしばしばあります。
具体的には、社内の技術者を使ってソフトウエアをつくっている場合や、原盤ビジネスをしている場合の原盤製作費用などです。また、受託開発などしている会社などは、仕掛けという細目で顧客の検収があるまでは原価にあげないことが通例です。
よって、財務諸表はあくまで「表層」であって、その本質には諸々の重要指標が隠れています。そして、その中でも会社の“命綱”といえる資金繰りもその1つです。
事業計画を作る際には、P/Lで作り、必ずそれに伴った資金繰り計画表をつくらないといけないということは、第2回コラムで記載したかと思います。そして、その計画は、第5回コラムで記載した予実管理という作業を常に意識することの重要性も記載しました。
資金繰りの予実管理については損益計算や重要パラメータのトレースとは違うやり方をすることが一般的です。
サンプルとして用意した「資金繰り管理表」をご欄いただきたいのですが、資金繰り管理表というのは、事業計画をもとに作られています。そして、月初残高とその計画値による月末残高で構成されているわけです。つまり、資金繰り計画表に実績を入れる場合には、その月の計画に対してどれだけ差異が生じたか否かを記載することが重要です。
P/Lベースのトレースでは、「今月達成できなければ来月達成しよう」とか、「四半期単位では達成しよう」──といったリカバリー的な要素で多く使うことができますが、資金繰りは毎月単位でのトレースをしていってください。四半期でつじつまをあわせるというのは非常に危険な考え方になります。
そして、その月の差異を入れることで、翌月の月初の残高が自動的に変わります。従って、資金繰り計画表というのは、トレースすればするほど、その姿が変わってきます。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス