アドマーケットプレイスと戦う?--代理店の矛盾と対策

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年06月04日 11時00分

 5月末のNILS(New Industry Leaders Summit:IT系経営者達とベンチャーキャピタルが年2回集まるカンファレンス)におけるパネルディスカッションで、米国で有名なアドマーケットプレイス会社2社と議論をした。AdBrite社とAdMob社である。彼らは独自の広告配信システムとメディアネットワークを持ち、広告主に対し広告枠を直接販売することによって急成長している。いわば広告代理店の競合者たる位置づけである。

 AdBrite社は、メディアネットワークを4万サイト以上持ち、広告主のサイトターゲティングも可能にしている(AdBrite談)。パネル中、私に以下の質問がとんだ。

「日本においてこのモデルは成立するかどうか?」と。私は以下のように答えた。

  • 日本の大手広告主は広告代理店を使うことに慣れている。また広告主は、特定アドマーケットプレイスだけを使わず、いろいろなネットワークを使いたいので、その統括的立場を広告代理店に求めるであろう。
  • また、日本の中小広告主(ロングテールな広告主)は、インターネットでサービス等を申し込むことに慣れていない。よってITリテラシを教えるファンクションが必要でありそれには手間がかかる。

よって日本という市場で、現時点においてアドマーケットプレイスがサービス展開するのは難しいと考える。と

 その時は言わなかったが、米国においては上記モデルにおいてのオークション購買方式が多数採用されている。メディアの代弁者たる広告代理店(広告主も)は、「広告の価値が、リアルタイムで変わる」ことは理解しがたいと感じる。

 ただ広告主のITリテラシが向上し、自分で手を動かし広告を買うような時代には、きっと広告代理店の立場が危うくなると感じるのである。その時代において、広告代理店は、インターネット広告を販売している立場(インターネット広告を普及させる立場)でありながら、広告主のITリテラシが向上することに難色を示すといういわば矛盾が起こるのである。

 パネルディスカッションの締めの言葉は、私に振られた。「将来的にはアドマーケットプレイスの存在は、広告代理店が認めざるを得ないであろう」と発言をした。

 では広告代理店は、今から何を準備すれば良いのか? それは極めて簡単な質問である。アドマーケットプレイスができないことをすれば良いのである。広告主との人的付き合いを深め広告主の出先機関的役割になることや、やはり「広告以外のことも提供できるトータルサポート体制」を築くことなどがその対策にあたる。

 アドマーケットプレイス、代理店の立場を脅かすかもしれない存在、将来的には、広告代理店とビジネスモデルの融合・連携を図っていきたいものである。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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