「ひとのフリ見て我がフリ決める」という人の行動心理をつかむ

加藤順彦(株式会社NIKKO 代表取締役社長)2007年05月28日 12時11分
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 たぶん日本人に限らないと思うのですけど、思うに典型的な日本人はランキング情報が好きです。はい!もちろん加藤も大好きです。世間的にイケているものを人並みに知っていたいという知識武装、安心。現代においてはある意味、Yahoo!ニュースもそういったステレオタイプの情報共有の手段だったりしますね。

 ランキングといえば、創業40年を超えるオリコンはいまや音楽CDのシングルやアルバムのデイリー、ウイークリーのチャートだけじゃなくて、あらゆるエンターテインメントのソフト領域のチャートを発表し、個人や法人に情報提供されています(オリコンランキング)。

 それどころか、いつの間にか「ユーザーのほしい情報をすべてランキング化」している「ランキングのポータルサイト」も運営されていました。

 うちの会社は渋谷駅から徒歩7、8分なんですけど、そこで東京急行電鉄さんがやっている「世の中で売れているものだけが売っている」というランキンランキン(ranKing ranQueen)さん、まさにいつも満員の店内には「流行りもの」が好きな私のような人種でいつもごったがえしております。

 なぜひとはランキングが気になるのでしょうか。

 ここでズバリ断言するとですね、要するに人間なるものは「ひとのフリ見て我がフリ決める」といういきものなのではないか、と思っています。

 ランキングに惹かれる自己って、ウラを返せば自分の第一印象や所感をあまり信用してないつーか、それよりも他人がいいと思っているものを使いたいというか、そういう深層心理の成せる業ではないのか、と。

 例えば、オリコンさんのシングル総合チャートをみると「いま一番売れているシングル」を知ることが出来ます。これは、その時点での日本という島国における大多数の趨勢を俯瞰している行為です。つまり日本の最大公約数を知ることが出来るわけですね。

 単行本のベストセラーをついつい買ってしまう行動も、自分が読みたいから買うというよりは、むしろ「世の中に最大公約数的に支持されている本くらいは一般教養として目を通しておきたい」という心理と繋がっている気がするのです。

 そしてGoogleのページランクというアイデアもしかりです。Googleは、数多くの良質なページからリンクされているページはやはり良質なページであるはずだ!というアイデア(PageRank)によって「ネットの民主主義」を実現したわけです。

 自分以外の他人が、量的に多数決的に支持しているページを上から順にランクして見せている、という意味では「インターネットという巨大な世界の中の最大公約数」を開示している会社と言えそうです。

 しかし、ここまではインターネット登場以前から現在へ続いてきた「最大公約数」の情報を指標化することでした。一方で、現在。自らの意思決定プロセスの指標にこれとは逆の観点である、「最小公倍数」の情報を取り入れることが可能になってきたのです。

 自分とそっくりな人の評価が知りたい。

 みなさんも「世の中には自分にそっくりな人があと二人いる」って話を聞いたことがあると思います。

 加藤にも小学生の頃にこの話を聞いて妙に納得した記憶があります。地球には60億人以上もいるわけですから、ある意味そっくりな人がいて当たり前だ!と思ったものです。Amazonを利用しているとつくづくそう思ってしまいます。

 AmazonというECサイトには、あまりに画期的な発想がいくつもビルドインされているわけですが、その中でも加藤がもっとも秀逸だ!と思っているアイデアが「この商品を買った人はこんな商品も買っています」です。

 自分が面白い!素晴らしい!!と思った本を同じような所感を持って読んだ他人が「世の中のどこかに」確実に存在していて、「自分よりも先に」高い評価をしていることを知ることが出来ることの素晴らしさ。感動のツボが、涙腺が、美意識が、エスプリが……。あらゆる感性が極めて自分と近似値であると考えられる他人を見つけることが出来るようになったのです。

 「自分とそっくりな」見知らぬ他人の高い評価は、たとえまったく売れていないモノに対しても強い購買欲求を呼びます。オリコン1位が日本の最大公約数だとすれば、これこそ一方の最小公倍数と言えるでしょう。

 インターネットという隕石によって、多数の意思(最大公約数)と自分とよく似た一個人の選択(最小公倍数)の双方の情報から、行動を決めるということが可能になりました。どっちも併せて「ひとのフリ」を測るのに使われているんですねぇ。

 以下のこの記事を見てまたさらにそう思いました。

「AttenTV」は、自分と同じようなウェブサイトを見ている他人の動きを見れるわけです。

 また、Googleが徐々にバージョンアップしてきたパーソナライズドサーチというサービスがあります。

ユーザー自身が過去に入力したキーワードなどをもとに検索結果を変えることで、本人が求める情報にたどりつきやすくすることを狙った個人向けカスタマイズのサーチロジックです。

 つまりGoogleは、最大公約数という発想も最小公倍数という選択もどちらも自らのサービスの中にうまく組み込んでいるわけですね

 という意味では、パーソナライズドサーチという仕組み自体が、「過去の自分自身」という、今の自分に極めてよく似た存在の行動原理を通じて、いまの最小公倍数を提示してくれているような気もしてきました。

加藤順彦
株式会社NIKKO 代表取締役社長

1967年4月7日生まれ、大阪府出身。関西学院大学商学部在学中の1986年に株式会社リョーマ設立に参加し、学生起業を興す。1991年同大学卒業後、株式会社徳間インテリジェンスネットワークに勤務。1992年に雑誌媒体専門の広告会社、日広(現NIKKO)を設立。1996年からインターネット広告の取り扱いを開始、ウェブサイトを軸としたインタラクティブマーケティングに強みを持つ総合広告会社へと発展。日本広告業協会 インタラクティブメディア研究小委員会委員、日経広告研究所 デジタル放送広告研究会委員。

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