Texas Instruments(TI)は現在、スクラップから売り上げを得ている。
TIはかつて、テキサス州リチャードソンの本社近くでガレージセールのようなイベントを開き、スクラップのシリコンウエハ(いろいろな理由でチップ生産には使えないウエハ)を販売していた。TIでシリコン調達エンジニアリングマネージャーを務めるMike Hayden氏によると、55ガロン(約208リットル)のドラム缶いっぱいのウエハを、地元のマニアに100ドルくらいで譲っていたという。
しかし2004年になって、加工された良質なシリコン基板の価格が急上昇し出すと、TIは方針を再検討し、スクラップウエハをソーラーエネルギー製品のメーカーに売却するようになった。
現在、TIはテキサス州、ドイツ、および日本にある自社の半導体製造工場から、約100万枚のウエハをソーラーエネルギー業界に販売している。売却されたウエハは太陽電池に転用される。このウエハ売却で年間約800万ドルを売り上げている、とHayden氏は話す。
「これは、スクラップウエハを無駄にするかリサイクルするかという問題だ。当社の重要な優先事項の1つとして、あらゆる面でできるだけ環境に配慮するということがある」(Hayden氏)
TIはこのプログラムを拡張し、台湾などにあるテスト施設やパッケージングの工場でもスクラップのシリコンをリサイクルする予定だ。また同社は、製造工程で使った水からシリコンを取り出してリサイクルする方法も探っているという。
IntelとAdvanced Micro Devices(AMD)でも同様のプログラムを実施している。Intelによると、同社はスクラップウエハ年間約100万枚をリサイクルしており、ソーラーエネルギー業界で利用されているという。
ここでは「スクラップ」という言葉を使ったが、実を言うとあまり適切な表現ではない。というのも、リサイクルされるウエハは良質なシリコンの結晶体でできているからだ。半導体業界で要求される純度の基準が太陽電池向けの基準よりも少しだけ高いために、半導体に使えないシリコンを太陽電池に再利用できる。
スクラップウエハの一部は生産設備の校正用に使われたものだ、とHayden氏は語る。金属でコーティングされ、研磨され、そしてプロセスを微調整するためにまた同じ機械にかけられる。繰り返しテストに使用されたウエハは、コンピュータチップとして利用するには厚さが足りなくなっている。
「われわれが使用できないウエハのほとんどは薄すぎるのだ」と、Hayden氏は語る。回路が形成されていないウエハなら、ほぼそのままの形で太陽電池業界に引き取られて利用される。TIが回路を作った後のウエハの場合は、溶解して回路部分の金属を除去する必要がある。
TIは現在、ウエハをドイツ、日本、香港、インドの顧客に販売している。ドイツでは、政府が太陽光発電を増やすプログラムを実施したことからソーラーパネル市場が活況を呈したが、2004年にはソーラーパネルの供給不足という状況になった。カナダ、米国、スペインその他の国でも、同様のプログラムによる需要の急増が起きている。アナリストやソーラーエネルギー企業幹部によると、シャープのような有名な太陽電池メーカーは価格上昇を防ぐために長期的な購入契約を結んでいるが、小規模企業や新しい企業は多方面からシリコンを探さなければならない状態にある、という。
そのため、TIは売却先を探す必要がないのだ、とHayden氏は述べた。「購入したい人たちが、向こうから見つけてくれる」
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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