5月24日から2日間にわたって開催しているテクノロジー系ベンチャー企業の経営者やベンチャーキャピタリストなどが集まるイベント「New Industry Leaders Summit 2007 Spring」(NILS)。6回目となる今回、最初のセッションは米動画配信支援企業のBrightcoveの創業者で最高経営責任者(CEO)のJeremy Allaire氏が飾った。
「Future of Internet TV」と題し、米ネット配信市場の最新情報と同社サービスを紹介するとともに、近く日本市場へ参入することも明らかにした。通訳はAdobe SystemsのDirector of Emerging Market Investmentsである田中章雄氏が務めた。
Allaire氏はウェブアプリケーションサーバと開発ツールの製品群「Cold Fusion」を生み出し、MacromediaのCTOなどを歴任したのち、2004年にBrightcoveを設立。インターネットと放送の融合が進みつつある大きなパラダイムシフトの中で、現時点では動画配信の支援システムを提供している。
同社のシステムを使う企業は、簡単に動画や音楽、写真などのコンテンツサービスを展開できるようになり、リンクや広告の管理なども行える。目下、動画配信ネットワークの核となる技術提供企業になることを目指している。
すでに、サービス体系としては大きく中規模以上の企業と中小企業向けに分け、TVや新聞など既存メディア3000社にサービスを提供。業績は公表していないが「数百%の急成長を続けている」(Allaire氏)としており、このほど8200万ドルの資金調達も実現させた。
市場概観としては「ビデオ業界は3500億ドルの市場規模だが、ネットはその0.01%の規模しかない」と指摘。そのため、動画配信ビジネスは今後の市場成長性が高いが、その上で「どう配信するか」と「どう課金するか」が重要になるとした。
Allaire氏によると、今後は既存の放送事業者以外にも動画配信を行う事業者が増えてくると見ている。具体的には、新聞や雑誌などのメディアや音楽などのエンターテインメント事業者などが本格的に動画配信に取り組んだり、これまで制作が主だった映像制作会社が自らコンテンツ配信を始めたり、一般消費者による映像制作および配信などが活性化したりするという。
「これからはメディアというもののとらわれ方が変わってくる。放送主体だった企業が動画だけでなく音楽やテキストなどのコンテンツを取り扱ったり、その逆も増えてくる。複合メディアが共存する時代が始まる」(Allaire氏)。こうした将来を見据えた上で、メディアやコンテンツオーナーはどう配信するかを考えなければならないというのだ。
どう課金するか、つまり動画配信サービスのマネタイズについても「複合」がキーワードとなるという。
Brightcoveでは現在、「ブランディング広告」による売り上げ貢献度が高いものの、品質の高い動画の「有料ストリーミング」および「ダウンロード販売」が将来的な収益の柱になることを目指している。複合的な収益モデルを設けることで、インターネットと放送の融合を実現させる上で最も重要と言える既存事業者と新規事業者双方の支持を得られると見ている。
日本市場への参入については、「日本はブロードバンド環境が整っており、非常に魅力的な市場だ。すでに国内メディア関係者とは話をしているし、トランスコスモスからの出資も受けている」(Allaire氏)とした。
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