本コラム4月17日掲載分でソニーの業績回復見通しと株価上昇期待について報じたが、5月16日に同社が発表した2007年3月期の決算と今期2008年3月期の業績見通しが好調なものとなり、株価も全体相場が軟調展開の中、逆行高して年初来高値圏での推移となっている。
主力銘柄の株価の上値の重さが際立つ相場展開が続く中で、ソニーに対して相場全般のリード役を期待する声が強まっている。
ソニーが16日に発表した2007年3月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高8兆2957億円(前々期比10.5%増)、営業利益718億円(同68.3%減)、税引き前利益1020億円(同64.4%減)、純利益1263億円(同2.2%増)となった。
エレクトロニクス部門では液晶テレビが順調に売上高を伸ばし、営業利益ベースでも黒字幅を拡大したものと推定される。また、デジタルスチールカメラも営業利益ベースで前々期比2ケタの増益を達成した模様だ。しかし、ゲーム部門は「PLAYSTATION 3」(PS3)の開発関連経費負担や、高価格のため日米地域での売り上げがいまひとつ伸び悩んだことから、2500億円を超える営業赤字の計上を強いられたものと見られる。
今期の2008年3月期の連結業績予想について同社は、売上高8兆7800億円(前期比6%増)、営業利益4400億円(同6.1倍)、純利益3200億円(同2.5倍)と急速な回復を見込んでいる。純利益は1998年3月期以来10年ぶり過去最高益を更新することになる。
今期の業績回復予想の背景にあるのは、液晶テレビ「ブラビア」の販売好調持続と、これまで営業利益ベースで巨額な赤字を計上し続けてきたPS3の赤字幅縮小(会社側では今期も500億円程度の営業赤字は残ると予想している)の見通しだ。液晶テレビでは、画面サイズの大型化の加速や、価格自体の下落沈静化による採算向上に期待が寄せられている。
同社CFO(最高財務責任者)である大根田伸行氏は「PS3事業については2008年度中の黒字化を狙う」としている。PS3の前3月期末までの生産台数は550万台と当初予想の600万台にも届かなかった。さらに、実売に近い数値とみられる小売店向け出荷(セルイン)台数は、360万台に止まっており、今期の目標販売台数の1100万台の達成が見えてくるにはいま少し時間が掛かりそうだ。今後は、PS3の販売価格引き下げのタイミングと値引き幅が焦点(ユーザーも販売価格の引き下げを想定して買い控えるという実態があることも確か)となりそうだ。
さらに、今期注目されるのは映画部門だ。現在公開中の「スパイダーマン3」が公開第1週目の世界ベースの週末興行収入で3億8200万ドルに達するなど極めて好調なスタートを切っており、先行きに期待感が強まっている。
また、今秋にも株式市場への新規上場が予想されている金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)の上場も注目を集めそうだ。SFHの新規上場については、今秋に間に合わないにしても、2008年度中の上場はほぼ確実とみられている。SFHの上場によって、ソニー自体の連結業績に大きくプラスに作用することになりそうだ。
ソニーの株価は2006年12月5に4470円で底値をつけて以降、多少の上下動はあったもののほぼ一環して上昇を継続しており、5月17日には6750円の年初来高値をつけている。全般に軟調相場が続くなかで、半年あまりで50%を上回る株価の上昇は(ちなみにこの同じ期間の日経平均株価の上昇率は8.7%)特筆すべきだ。今後も様々な好悪の材料によって株価の上下変動は予想されるものの、中長期的には株価1万年回復を目指したジリ高の息の長い相場が期待できそうだ。
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