63歳の世界的デザイナーが挑む、新しきウェブデザインの世界 - (page 3)

永井美智子(編集部)2007年05月14日 15時00分

――デザインでサービスを差別化するという考えは、今までのウェブ業界ではあまりありませんでしたね。ただ、芸術であれば作り手が作りたいものだけを作ることに意義がありますが、サービスのデザインはユーザーの視点に基づく必要があります。作り手の思いとユーザー視点のバランスはどのようにして取るのですか。

 デザイナーがデザインしているんじゃなくて、エンジニアもデザインしているという考え方ですね。私はディレクションしながら、大きい意味で「こうはならないですか」とか「これは取れないですか」とは言います。

 でも、実際はみんながデザインして、みんながシステムを考えているんです。そうでないと一方通行になってしまう。デザイナーが見た目ばかり考えて、企画担当者は中身だけを考えて、技術者は裏の仕組みだけを考えるといったように。そうではなくて、それらが一緒になったときに初めて、新しい今までになかったものが生まれると思うんです。だから、本当にチームワークですね。

――Asadaさんがおっしゃるようなことをやりたくてもできない、という人もいると思います。何かアドバイスはありますか。

 僕は「相手がこういうチャンスをくれないからできない」じゃなくて、チャンスはやっぱり求めていくもので、常にお互いに育てていくものだと思っています。

 ティファニーを例にしますと、絶対にそれまでのルールがあって、ルックがあるんですよ。で、僕がティファニーのデザインをするときに思ったのは、「ちょっと待てよ、それまでと同じものをやっていたら僕は常に負けてしまう。僕には何ができて、何を持っているんだろう」と。そうすると日本のものの見方とか、ものの感じ方とかいったものが彼らにはすごく新鮮で、彼らは僕をうまく使う。

 若い人たちに一番言いたいのは「自分にチャレンジをしなさい」と言うことですね。クライアントじゃなくて、他人じゃなくて、仲間じゃなくて、自分にチャレンジしたらその芽は出る。芽が出たらそれをどう育てるかという努力も必要。チャンスをつかんでも育てないと、その後がなくなっちゃいますよね。

 だから、僕はあきらめずにチャレンジをしたら、いつかチャンスは来ると思っています。それは若いグラフィックのデザイナーでも、どんな職業をしている人たちも一緒だと思います。

 チャレンジって何でも怖いんですよ。1回やったことをもう1回やっている分には安心ですよね。でも、その新しい一歩というところに進みがあって、上達がある。僕は今63歳ですが、いまだに自分にチャレンジしています。Zingaが一番いい例で、今までやったことがないんです。コンピュータの世界なんて今までとは全然違う世界。でも、これもチャレンジ。

 僕はどこまで本当にできるのかな。僕は満足しないと、ぎりぎりまで「まだなんですけど、もう少しください」ってお願いする。やっぱりチャレンジしていると自分もやりがいがあるし、新しい理解もあるし、すごく楽しい。

 だから、僕の世界の中には、あまり年齢とか、この人は若いからということはないんですよ。どの部門でもできる人と対等でいたいという感覚はありますね。その代わり、僕のテリトリーは僕がやりたいぞ、と思っています。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]