デザイナーがデザインしているんじゃなくて、エンジニアもデザインしているという考え方ですね。私はディレクションしながら、大きい意味で「こうはならないですか」とか「これは取れないですか」とは言います。
でも、実際はみんながデザインして、みんながシステムを考えているんです。そうでないと一方通行になってしまう。デザイナーが見た目ばかり考えて、企画担当者は中身だけを考えて、技術者は裏の仕組みだけを考えるといったように。そうではなくて、それらが一緒になったときに初めて、新しい今までになかったものが生まれると思うんです。だから、本当にチームワークですね。
僕は「相手がこういうチャンスをくれないからできない」じゃなくて、チャンスはやっぱり求めていくもので、常にお互いに育てていくものだと思っています。
ティファニーを例にしますと、絶対にそれまでのルールがあって、ルックがあるんですよ。で、僕がティファニーのデザインをするときに思ったのは、「ちょっと待てよ、それまでと同じものをやっていたら僕は常に負けてしまう。僕には何ができて、何を持っているんだろう」と。そうすると日本のものの見方とか、ものの感じ方とかいったものが彼らにはすごく新鮮で、彼らは僕をうまく使う。
若い人たちに一番言いたいのは「自分にチャレンジをしなさい」と言うことですね。クライアントじゃなくて、他人じゃなくて、仲間じゃなくて、自分にチャレンジしたらその芽は出る。芽が出たらそれをどう育てるかという努力も必要。チャンスをつかんでも育てないと、その後がなくなっちゃいますよね。
だから、僕はあきらめずにチャレンジをしたら、いつかチャンスは来ると思っています。それは若いグラフィックのデザイナーでも、どんな職業をしている人たちも一緒だと思います。
チャレンジって何でも怖いんですよ。1回やったことをもう1回やっている分には安心ですよね。でも、その新しい一歩というところに進みがあって、上達がある。僕は今63歳ですが、いまだに自分にチャレンジしています。Zingaが一番いい例で、今までやったことがないんです。コンピュータの世界なんて今までとは全然違う世界。でも、これもチャレンジ。
僕はどこまで本当にできるのかな。僕は満足しないと、ぎりぎりまで「まだなんですけど、もう少しください」ってお願いする。やっぱりチャレンジしていると自分もやりがいがあるし、新しい理解もあるし、すごく楽しい。
だから、僕の世界の中には、あまり年齢とか、この人は若いからということはないんですよ。どの部門でもできる人と対等でいたいという感覚はありますね。その代わり、僕のテリトリーは僕がやりたいぞ、と思っています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)