歯に衣着せぬ発言で知られるライターで、セキュリティ界の第一人者でもあるBruce Schneier氏が、セキュリティ業界の存在そのものに疑問を呈した。同氏は、同業界の存在は、他のハイテク企業に安全性を欠くソフトウェアやハードウェアを出荷する意思があることを示しているにすぎないと指摘した。
Schneier氏は、セキュリティ業界の主要見本市Infosecurity Europe 2007で講演し、その中で、「このような見本市が存在すること自体が問題だ。この見本市に足を運ぶ必要があること自体おかしい」と語った。
「われわれが電子メールを保護する企業を(同見本市に)探しに来る必要があるのはおかしい。電子メールはすでに安全であるべきなのだ。またネットワークやサーバ用のセキュリティ製品を購入する必要があるのもおかしい。われわれのネットワークやサーバはすでに安全であって然るべきなのだ」(Schneier氏)
現在Schneier氏は、BT Counterpaneの最高技術責任者(CTO)を務めている。同氏が創設したCounterpane Internet Securityは、2006年に英通信大手のBT Groupに買収された。BT GroupがCounterpaneを買収した理由について、Schneier氏は、セキュリティをユーザーから追加コストを徴収したり、不自由を強いるアドオンではなく、すべてのサービスの一部として提供する必要性をBT Groupが認識したからだと説明する。
英上院科学技術委員会の議長を務めるLord Alec Broers氏もSchneier氏と同様の意見を述べた。Broers氏は、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションのベンダーからインターネットサービスプロバイダー(ISP)に至るまで、すべての企業はエンドユーザーのセキュリティに対し、より大きな責任を負う必要があると指摘した。
Schneier氏は、「セキュリティは、小さいながらも重要な要素だ」と述べた上で、消費者は本質的に安全性に欠ける製品を受け入れるべきではないと付け加えた。
一方、セキュリティベンダー英Sophosのシニアテクノロジコンサルタントを務めるGraham Cluley氏は、Schneier氏の理想をかなえるまでの道のりは、現実をみるととても長いと指摘した。Cluley氏は、「なぜ、皆、もっと早くこの問題について考えなかったのか」と述べ、「(Schneier氏の理想は)素晴らしい」と付け加えた。
Cluley氏は「もし強盗が起きなければ、もし交通事故が起きなければ、道でつまずくことがなければ、それは素晴らしいことだ」とした上で、「しかし、ソフトウェア開発者も人間であり、人間はミスを犯すものだ。その点を認識する必要がある」と付け加えた。
「私には、100%安全なOSなど想像できない。なぜなら、そのOSのプログラムを作成する重要な要素は人間だからだ」(Cluley氏)
調査会社Freeform Dynamicsのサービス担当ディレクターJon Collins氏も、セキュリティ業界の価値に対する自身の疑念を述べたが、一方で、同業界は常に、エンドユーザーのエラーと安全性を欠く製品の出荷という2つの力に支えられていると指摘した。
Collins氏は、「以前は、セキュリティ業界の存在意義は、人々を怖がらせ、彼らが恐れているものから彼らを保護するための製品を販売することにあると常に考えていた。しかし今は、業界が存在しているのは、人々に(セキュリティ製品を)購入する意欲があるからだと考えている」と語った。また、同氏は、セキュリティ製品に対する投資は、企業がすでに被った問題に対し受身的になる傾向があり、そのため、セキュリティ業界は「消火器業界」になっている、と付け加えた。
しかし、Collins氏は、ユーザーの反応の原因が、常に本質的に安全性を欠くソフトウェアやハードウェアにあるとの指摘は誤りだと指摘した。
「仮にすべてが安全だとしても、エンドユーザーは、設定やインストールの方法を間違えたり、誤った特権や許可を有効にするだろう」(同氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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