「楽天VS.TBS」「HOYAVS.ペンタックス」のM&A(企業の合併・買収)が大攻防を繰り広げている。楽天から株式の買い増し表明を受けたTBSは、野球協約違反という“搦(から)め手”で反撃に打って出た。ペンタックスは筆頭株主である投資会社の揺さぶりで、HOYAによるTOB(株式公開買い付け)に応じざるを得ないという“窮地”に陥っている。
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□楽天VS.TBS
■「野球協約違反」文書で警告
TBSの井上弘社長は25日の定例記者会見で、楽天がTBS株を20%超に買い増し、経営への影響力を強めることは、プロ野球の「野球協約」に違反すると警告する文書を楽天側に送付したことを明らかにした。
楽天は、プロ野球球団の「東北楽天ゴールデンイーグルス」を保有する一方で、TBSも「横浜ベイスターズ」を保有しており、複数球団の株式保有を原則禁止する協約の183条に違反するというもの。違反問題は2005年に楽天がTBS株を大量取得した際にも浮上したが、結論が出ないまま先送りされており、楽天としては痛いところを突かれた格好だ。
井上社長は会見で、「野球協約のことは、楽天側も知っているはず」と批判した。
申し入れ書は、楽天がTBS株を19%近くを所有している現状でも、すでに野球協約に抵触すると指摘。楽天による株買い増し表明などは「協約違反状態をまったく無視する行為」と批判した上で、「今後も引き続きベイスターズのオーナー会社であり続ける所存」と、球団の継続保有を表明している。
楽天は「20%超」への買い増しとともに、三木谷浩史楽天社長ら2人を社外取締役に選任するよう要求。TBSは買収防衛策の発動準備を進めている。TBSが再び違反問題を持ち出したのは、買い増しの動きを牽制(けんせい)する狙いもあるとみられる。
TBSは横浜球団を通じ、日本プロ野球組織(NPB)に改めて判断を求める方針だ。
これに対し、楽天は25日発表したコメントで、06年にNPBに対し、横浜球団の経営に関与しないとする誓約書を提出していると反論。「楽天球団が誓約書を順守すべく指導していく」とし、改めて協約違反には該当しないとの見解を示した。
この問題では、楽天がTBS株を大量取得した直後の05年10月に開かれた球団代表者による実行委員会で、楽天を除く11球団から「協約違反」と指弾された。翌月開かれたオーナー会議で、楽天の三木谷浩史社長は「一定のTBS株を所有しているだけで横浜に何の影響力も持っていない」と釈明したが、TBS以外の球団オーナーからも厳しい批判を受けている。
その後、楽天とTBSが和解し、提携協議に入ったことから、NPB側は、協約違反かどうかの判断を棚上げしたままになっている。今回、両社の対立が再燃したことで、プロ野球界にも再び問題が飛び火することになった。
楽天としても、今後開かれるプロ野球の実行委員会やオーナー会議で批判が再燃するのは確実で、何らかの対応を迫られる可能性もある。TBSとの攻防が泥沼化するなか、新たな問題を抱え込んだといえそうだ。
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□HOYAVS.ペンタックス
■スパークス役員退陣要求
ペンタックス株約24%を保有する筆頭株主の国内独立系投信・投資顧問会社、スパークス・グループは25日、HOYAとの統合に反対するペンタックス役員の事実上の退陣を求める株主提案を行ったと発表した。
HOYAとの合併を推進し解職された浦野文男前社長ら統合積極派3人の選任を求めており、HOYAが提案しているTOBへの賛同を促す揺さぶりとみられる。ペンタックスはスパークス以外にも外国人投資家の持ち株比率が5割に達しているもようで、6月の株主総会ではスパークスの提案が承認される可能性もあり、市場では「TOBに賛同せざるを得ない」との見方が広がっている。
スパークスは、現経営陣について、「内紛の結果、現在の地位に就いたという意味で、経営経験、能力は未知数」と厳しく批判。その上で、「このまま経営を委ね続けることは企業価値の棄損につながる可能性が高い」と強調した。
スパークスはこれまで投資先の経営陣との対話を重視する穏健派で知られる。同社としては初の株主提案という“強硬手段”は、単独での生き残りに固執する現経営陣への強いいらだちの表れといえそうだ。
スパークスは当初、HOYAとペンタックスの合併に対して、「合併比率が低い」との不満を伝えたとされる。ただ、その後、HOYAがTOBによる買収に切り替えた際には、1株770円のTOB価格を支持している。
「保有株を売却し投資利益を回収する絶好の機会」(関係者)と判断したとみられ、阿部修平社長は、ペンタックス現経営陣と直接会談し、「TOBに賛同しないなら、株主価値向上の対案を示してほしい」と要求してきた。
これに対し、ペンタックスの経営陣は煮え切らない態度を続けている。「単独での生き残り」が本音とみられるが、筆頭株主の意向には逆らえず、「HOYAとの継続協議」を打ち出している。一方で、第三者との交渉を制限する合併合意時の条件緩和をHOYAに要請するなど、HOYA以外との経営統合や提携も模索している。
ただ、HOYAが要請に応じる可能性は低いうえ、「具体的な相手もいない」(関係者)のが実情。MBO(経営陣による自社買収)でスパークスなどの保有株を買い取る選択肢もあるが、買い取り資金の提供者も見当たらず、TOB価格を上回る価格の提示は困難な状況だ。
HOYAにも、「最終的にTOBに賛同せざるを得ない」との計算があるとみられ、“待ち”の姿勢をみせている。ただ、退陣要求により賛同に転じれば「自己保身」との批判を受けるのは確実で、ペンタックス経営陣としては、苦しい判断を迫られることになりそうだ。
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