IBMは、x86プロセッサ搭載サーバで稼働するLinux向けに開発されたアプリケーションを、同社の「POWER」プロセッサ搭載サーバ「System p」で実行可能とするためのソフトウェアのベータ版をリリースした。
米国時間4月23日に発表された「System p Application Virtual Environment」(AVE)は、新興企業Transitiveのソフトウェア「QuickTransit」を基にしている。これは、あるチップに対するソフトウェア命令をほかのチップが理解する言語に変換するもので、頻繁に使用する命令を格納することにより実行を高速化する。
このソフトウェアは、ある特定種類のコンピュータプロセッサ用に作成されたソフトウェアバイナリファイルは、ほかの種類のプロセッサでは動作しないという「バイナリブレーク」と呼ばれる問題に対処するものである。Linuxは、Intelの「Xeon」プロセッサやAdvanced Micro Devices(AMD)の「Opteron」プロセッサを搭載したx86サーバで広く使用されるが、IBMのPOWERチップで使用されることは比較的まれで、その原因の一部はバイナリブレークにある。IBMは何年もの間、この問題を解決し、より多くのLinuxソフトウェアが利用できるように取り組んできた。
System pでは現在、IBM版のUNIX「AIX」と、Red HatおよびNovellのLinux製品、IBMのサーバ用OS「i5/OS」が稼働し、仮想化技術を用いてこれらのOSを別々のパーティションに分けて同時に稼働することもできる。IBMは、AVEソフトウェアにより、効率的に使用されていない多くのx86サーバの代替として、同社のSystem pマシンが使用されるようになることを望んでいる。
AVEは現在ベータテスト中だが、IBMは無償の正式版を2007年後半にリリースする予定であると述べた。「POWER5」および「POWER5+」プロセッサを搭載するサーバ、または「PowerPC 970」プロセッサ搭載のブレードサーバ「JS20」または「JS21」で稼働する。現時点で実行可能なソフトウェアは、32ビット版のLinuxソフトウェアに限られている。
同社は、AVEと最新のx86プロセッサ搭載サーバを比較した場合のソフトウェア性能に関しては言及していないが、現在の開発目標は、機能の充実化から性能改善へと移行してきていると述べた。IBMは、演算を多用する処理に対しては、それを実行するプロセッサ用に記述されたソフトウェアを使用することを推奨している。
IBMは、AVEを用いてLinuxソフトウェアをIBMのPOWERサーバに移行しようと計画するソフトウェア企業に対し、1年間の無償サポートを提供すると述べた。顧客も1年間の無償サポートを受けることができる。同社広報担当のJohn Buscemi氏によると、x86の認定を引き継ぐことはできないが、「x86アプリケーションを変更することなくSystem pで動作すること」が重要であるという。
Transitiveのそのほかの顧客としては、Apple、SGI、Intelが名を連ねている。Appleは「Rosetta」ソフトウェアを用いてPowerPCチップからIntelチップへのユーザーの移行を容易にしている。SGIは、「MIPS」プロセッサ搭載の旧型マシンから「Itanium」ベースモデルの新型マシンへ移行するユーザー向けにQuickTransitを用いたソフトウェアを提供している。Intelは、Sun Microsystemsの「SPARC」チップ用のソフトウェアを利用するユーザーにTransitiveの技術を用いたソフトウェアを提供し、自社の「Itanium」ベースモデルに取り込みたいと考えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」