ブロードバンドサービスの共有を可能とするWi-Fiルーターを開発するスペインの新興企業FONは、米国インターネットサービスプロバイダ(ISP)と初の大型提携を結んだ。
同社は米国時間4月23日、Time Warner Cableと提携し、ブロードバンド加入者らが世界各地のすべてのFON Wi-Fiホットスポットにアクセスできるようにすると発表した。これにより加入者らは、ワイヤレスサービスを共有し、他のブロードバンドネットワークに無償でワイヤレスにローミングすることが可能となる。
FONのソフトウェアは、ブロードバンド加入者のインターネット接続を分割し、家庭内の接続セキュリティを維持しつつ、家庭外にオープン接続を提供する。FONのルーター「La Fonera」は、簡単にインストールできるように設計されており、標準規格である「802.11g」を用いている。ユーザーは単に同ルーターを自分のブロードバンドモデムに差し込むだけで、そのブロードバンド接続をFONアクセスポイントにすることができる。
FONによると、米国には6万人近くの同社Wi-Fiユーザーがいるという。米国第2位のケーブル事業者であるTime Warner Cableとの提携により、その660万人の家庭用高速ネットワーク加入者がFONネットワークに加わる可能性がある。
今回の提携についてTime Warnerからのコメントは得られていないが、同社の関係者はFONと提携したことを認めた。
FON USAの最高経営責任者(CEO)であるJoanna Rees氏は、さらに多くのインターネットサービスプロバイダと米国で提携することを同社は望んでおり、Time Warnerとの提携はその最初の一歩であると述べた。FONは、日本のBB.ExciteやドイツのInterouteなどのISP数十社と米国外で既に提携している。
訴訟の危険性を回避するという観点から、FONがビジネスを拡大していく上で、これらの提携は重要である。FONがサービスを開始した2006年、同社Wi-Fiサービスは家庭外でのブロードバンド接続の共有を可能にするため使用条件に違反している、と主張した米国ブロードバンドプロバイダの1社にTime Warnerは含まれていた。しかし、今回の新しいFONサービスについて、Time Warnerでは例外とみなすことにした、と同社広報担当者は認めている。
Rees氏は、「Time Warnerは、自社のユーザーが家庭内だけでブロードバンドサービスを利用したいわけではないことに気がついた」と述べた。「ユーザーは世界中に移動し、どこにいてもアクセスできることを望んでいる」(Rees氏)
事実、Time Warnerもワイヤレスによるモバイル性について能力を既に認識している。同社は、ケーブル事業者3社とともにSprint Nextelとの共同事業を立ち上げ、ブロードバンドとケーブルテレビサービスを合わせたワイヤレス電話サービスを開発および販売している。
Time Warnerは2006年、「Pivot」という新しいサービスを開始した。同サービスは、ミズーリ州カンザスシティ、ノースカロライナ州ラリー、テキサス州オースティン、オハイオ州シンシナティおよびデートンなどいくつかの都市で既に提供されている。同社は、2007年末までに同サービスを同社サービス提供範囲である33州全域で提供する計画である。
Rees氏は、FONとTime Warnerの今回の提携により、どのようなサービスを提供するかについてはまだ議論中であると述べた。Time WarnerがFON Wi-Fiルーターをユーザー向けに直接販売および配布することはしない。その代わりに、Time Warnerの加入者がFONを介してWi-Fiサービスに加入することを可能にする予定である。
またFONは、「alien」ユーザーからの収入もTime Warnerと分配する予定である。「alien」ユーザーとは、家庭にFONルーターを所有せず、ネットワークに加入していないが、1日あたり2〜3ドルを支払ってFON Wi-Fiネットワークにアクセスするユーザーのことである。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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