IBM、TSV技術によるチップの垂直接続パッケージの商用化計画を発表

文:Michael Kanellos(CNET News.com) 翻訳校正:中村智恵子、小林理子2007年04月12日 22時05分

 IBMはチップの性能を高め消費電力を削減するため、チップ間の接続に比較的新しい技術を導入する予定だ。

 TSV(Through Silicon Vias)と呼ばれるこの技術は、シリコンウエハにうがった穴に金属を埋め込むことによって、チップを垂直に接続するものだ。これによって、プロセッサとメモリといった異なるコンポーネント、あるいは2つのチップの中にある2つのコアを積み重ねることが可能になる。現在ほとんどのチップはバスと呼ばれるチャンネルを通じてデータを転送しているが、バスはワイヤに組み込まれているため、過密状態になりやすい。TSVの場合、1秒あたりに転送できるデータがずっと多く、しかもエネルギーをそれほど消費せずに動作する。

 TSVを最初にとりあげたのはIntelだったが、IBMは商用として開発する先発企業になりそうだ。IBMは、TSVを利用した通信チップのサンプルを2007年中にも顧客に提供し、2008年には商用生産を開始する予定だ。TSVは、IBMの主力であるシリコンゲルマニウムチップの消費電力をおよそ40%削減する。これらのチップには、TSVによる接続を可能にするために微小な穴が通され、タングステンが埋め込まれる。

 「ワイヤ接続はかなり多くのノイズが発生するため、トランジスタによっては性能が十分に発揮できないこともある」と、IBMの半導体研究開発センターのバイスプレジデントを務めるLisa Su氏は述べている。

 3年から5年の間には、TSVを利用してメモリを直接パワープロセッサに接続し、メモリコントローラと呼ばれる別のコンポーネントを使わずに済むようになるだろう。そうなれば、TSVによって性能がおよそ10%改善され、消費電力はおよそ20%削減できると見込まれる。IBMでは、同社のスーパーコンピュータ「BlueGene」にTSV技術を使うことも視野にいれている。

 また、TSVではチップを垂直方向に積むためマザーボードのスペースが節約できる。現在、チップメーカー数社がパッケージとしてチップを垂直に積んでいるが、これらのチップは通常バスを通じて取り付けられているため、スペースの節約にはなっても、帯域幅を最大限に生かしているとは言えない。バスポートはチップの側面にあるのが一般的だが、TSVでは比較的広さに余裕のあるチップの底面または上面から出る電極がシリコンを貫通する形になる。

 TSVを利用して複数チップをパッケージすることで、チップの販売方式が変わることも考えられる。コンピュータメーカーは、異なるベンダーからプロセッサやメモリ、あるいは別個の通信チップを購入するのではなく、接続済みのチップパッケージ一式を購入することになるだろう。つまり、IBMやIntelといった企業は、最初に自社の半導体とパッケージしておくことになるため、標準タイプのメモリの販売に再び商機を見出す可能性がある。

 新プロセッサのように大々的に報じられることこそないが、チップの相互接続やパッケージングはここ数年の技術革新著しい分野として注目されている。それは大きな性能改善が可能な分野の1つと設計者が考えているからだ。たとえば、SanDiskに買収された新興企業Matrix Semiconductorは3D設計のメモリチップを発表しているし、Sun Microsystemsはプロセッサ間の接続に使われているワイヤを取り払いチップ同士を直接つなぐ接触通信(Proximity Communication)の普及に努めている。

 一方、Rambusは1ギガビットあたり2.2mWの低消費電力で毎秒6.25ギガビットの情報を転送できるチップ間の相互接続技術(開発コード名「Loki」)を発表したばかりだ。

 Rambusは2007年初めに、1つの趣向として、Lokiが単3電池2本で駆動するシステムを組んでみせた。このチップは40時間以上作動し、動かなくなるまでに3.6ペタビットのデータを転送した。これは360万ギガビットつまり約3600兆ビットのデータに相当する。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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