コーポレートベンチャーキャピタルでは、投資先に対し、資本のつながり以外にも、事業同士のつながりによる事業シナジーが求められることもある。
投資する側、投資される側。双方が信念を持って展開する事業が、コーポレートベンチャーキャピタルという存在を通じて、どのようにして新たな価値を生み出しているのか。また、そのための条件とは何か──。
コーポレートベンチャーキャピタルを特集する第1回目は、サイバーエージェント・インベストメント社長の西條晋一氏と同社キャピタリストの鈴木麻美氏、ジー・プラン社長の渡辺浩氏が対談する。
勝屋氏:これから3回の対談はコーポレートベンチャーキャピタルを特集していきたいと思っております。私自身も形式は少し違いますがコーポレートベンチャー事業に6年以上携わっており、とても関心のある分野です。一般的にコーポレートベンチャーキャピタルは自社事業とのシナジー(相乗効果)にフォーカスするなど、キャピタルゲインの獲得を主とした通常のベンチャーキャピタル(VC)とは異なった独自の活動をなさっていると思うので、その実体にせまり、ゲストの皆さんに率直にお伺いしていきたいと思います。
そこで今回のゲストは、IT系企業を対象としている代表的なコーポレートVCのサイバーエージェント・インベストメント社長の西條晋一さんと同社キャピタリストの鈴木麻美さん、同社投資先でジー・プラン社長の渡辺浩さんです。まず、西條さんからお伺いしたいのですが、どういった経緯でコーポレートVCを始めたのか、その特長やフォーカスエリアなども含めてお聞かせ下さい。
西條氏:実は上場する前から投資はしていて、最初は藤田(サイバーエージェント社長の藤田晋氏)を中心とした経営者のお付き合いの中で投資を何件かやっていたんです。僕も個人的にVCには興味があって、やりたいなと思っていました。ただ、2000年に上場したあと、しばらくは上場赤字だったんですね。黒字になったのは2003年の第2四半期からなのですが、その頃には利益面でも事業が軌道に乗ってきたので、もう1回投資を開始し、本業としてやっていこうということになったんです。
サイバーエージェントはほぼインターネットの事業領域をカバーしていますし、インターネットにフォーカスすれば一緒にできる部分も多いんですよね。ファイディングの情報量もありますし、どういうところが伸びているのかという目利きもできる。投資させていただいたあとも当社の広告代理事業で、お手伝いができるというわけです。これなら本業でやってもいいんじゃないかと思い、2004年の終わりから本格的に投資事業をスタートしました。
勝屋氏:最初はファンドで始められたのですか。
西條氏:そうです。20億円弱のファンドで始めました。ただ、サイバーエージェントの名前で投資して欲しいというニーズが高まっていったことと、年間の投資額も自己資金で十分賄える範囲だと分かったので、現在は外部調達から自己資金での投資に切り替わってます。
勝屋氏:投資の担当は何人くらいいますか。
西條氏:キャピタリストで8人。一番若い人は入社して1年です。最年長は34歳で、平均年齢は28歳くらいです。やはり若い人の方がユーザー感覚としてのセンスはいいんですね。そういうキャピタリストの層も張っておかないと、ユーザーサイドからの評価がしづらくなってきているんです。8人のうち3人が女性ですし、特長としては若く、女性も活躍しているVCと言えると思います。
勝屋氏:海外へも積極展開されていると聞きましたが。
西條氏:我々のコンセプトはあくまでITに特化したベンチャーキャピタルですので、規模を拡大しようとして分野を広げてしまうと強みがなくなってしまうんですよね。その代わりに選んだのが地域の拡大だったんです。
勝屋氏:場所としては中国などでしょうか。
西條氏:そうですね。中国は市場も大きいですし、ステージ的にも日本の2002-2003年くらいなので。米国にも人を置いているんですが、米国の場合は投資するというより、IT関連の最新情報を持ってこようという視点です。
勝屋氏:先ほど、ほとんど自己資金に切り替わっているというお話でしたが、サイバーエージェントと、サイバーエージェント・インベストメントの切り分けはどうなっていますか。
西條氏:いわゆる国内のマイナー投資はすべて本体投資に切り替わっているので、サイバーエージェント・インベストメントでは違う目的の投資、たとえば中国など海外案件や、金額が大きくかつシェアを大きく取っていく案件などは本体でリスクを背負ってやるべきではないという意見もあって、これはインベストメントの傘下のファンドでやっています。
勝屋氏:サイバーエージェントがリードを取っていくといういうより、比較的マイノリティな投資が多いと思うんですが、今後はリードを取ってやっていくというようなことは考えていますか。
西條氏:シードやアーリーなどの早い段階で多く投資して、徐々に減らしていって15%以下で上場ということはあると思います。ですからステージが若ければありだと思いますね。
大学時代より起業家ネットワーク運営に携わるなどベンチャー支援活動に従事。国内外の企業のインターンを経て金融系ベンチャーキャピタル安田企業投資に入社。主にインターネットビジネスへの投資に従事する。その後、ベンチャー企業の新規事業立ち上げを経て2003年サイバーエージェント入社。外国為替保証金取引サービスを立ち上げた後、2005年より投資育成事業部にてITベンチャーの投資育成業務に従事。2007年MVP(ベストプレイヤー賞)受賞。専門領域はインターネットビジネス全般で特にCGM、Eコマース、アフィリエイト、ドロップシッピング、ポイントビジネス、ライフスタイルビジネスなど。
趣味:料理(不定期で週末に料理教室を運営しています【Asami’s Kitchen】)、レストラン食べ歩き(日本フードアナリスト協会認定フードアナリスト、食に関するブログも執筆中=「お家でレストランレシピ」)、テニス、ダイビング
投資先: 前職にて、ネットエイジグループ(2006年8月30日マザーズ上場)、ラクーン(2006年4月6日マザーズ上場)。現職では、インタースペース(2006年9月19日マザーズ上場)、AQインタラクティブ(2007年2月28日JASDAQ上場)、ジー・プラン、リアルコミュニケーションズ、ウェブシャークなど。
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