Web 2.0の先を開拓する「メタデータ時代」

取材・構成:松島 拡2007年03月30日 12時52分

 Web2.0の次にどんな世界が来るのか――。

 インターネットに携わる者なら誰でも、それを見据えて戦略を組むのと、ただ時代の到来を待つのとでは、将来大きな差が生まれることを知っている。Google然り、Amazon然り、来るべき次の世界にいち早く、かつ的確に備えた者が生き残るのだ。

今は「ページ」のみにとどまるナビゲーション

 現在の情報産業の多くは、インターネットとウェブブラウザの誕生、そしてそれに続くウェブページの出現とともに発生した。そしてそれらの産業は、情報を出すことではなく、読者や視聴者にページのナビゲーションを与えることで収益を上げてきた。そういった産業が発達したために、検索したとき上位に表示されるにはどうしたらいいか、それをどうコントロールするか、という点が情報発信者にとっても重要となった。

 現在はそこからさらに一歩進み、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やブログが登場して、より多くのユーザーが自ら執筆者となり、思い思いに情報を収集したり、分類したりすることで、エンドユーザー同士のつながりが生まれた。それが今話題のWeb2.0である。

 しかし、ユーザーのインターネットへの関わりは、相変わらずWeb1.0に則った規格や基準(フォーマット)に従って行われ、参加者も能動的な人のみに限られている。つまり、用いられるコンテンツは、音楽やビデオの配信などが増えてきているとはいえ、基本的にウェブページがそれらの情報のアウトプットとして存在する。

 ページというものが、たまたまインターネット創生期からあったためによく使われるだけで、本来インターネットのごく一部に過ぎないものであるにもかかわらず、このようにすべての情報はページに集約され、情報産業はそれらに対するナビゲーションに血道を上げているのである。

 私の想像する「次の世界」では、これまでのようにページをナビゲーションするのではなく、ページから離れ、モノとモノ、人と人とを直接つなげていく、ということが大きな軸となる。

能動から受動へ変える「マシンソノミー」「オートタギング」

 Web2.0では、ユーザーが参加することによって様々なコンテンツを分類していくフォークソノミーという概念が語られ、その具体的な例として、ソーシャルタギングと呼ばれるコンテンツへのタグ付けが至るところで行われている。しかし、これからはユーザーが行う行動を機械が代わって行う「マシンソノミー」や「オートタギング」といったものが出現し、ユーザーとインターネットの関わりも、能動から受動へ、という流れになるだろう。

 手前味噌で恐縮だが、C2cubeで行っているサービスも、そうした流れの一つに当たる。

 この試みは、約375万ブログサイトの情報を自動収集して構文解析し、ある事柄がどのように語られているのかを数値化することで、ブロガーの自由な書き込みを構造化し、各ユーザーの感情や思考に従って、モノに対するナビゲーションを与える、というものだ。

 例えば、新宿のラーメン屋で一番おいしいとされているのはどこか調べたい、という要求に対し、ブログ中の好感度を分析して、ナビゲーションを与えることができる。また、特定の事柄に関して、似たような考えを持つブロガー同士をつなぐことも可能である。

 そうしたナビゲーションの際に重要となるのが、「メタデータ」である。メタデータの具体的な例を挙げるとすると、たとえばデジタル写真についている撮影者や機材、日付などのデータだ。特に、最近の携帯電話の写真には、GPSによる位置情報というメタデータが入っているため、いつどこで撮った写真なのかを知ることができる。

 ここで、写真の合成という点で、面白い例がある。マイクロソフト・ライブ研究所の開発した「Photosynth」だ。

 「写真のシンセサイザー」ともいうべきこのシステムは、撮影された写真の画角を調べて、その写真がどこからどういった角度で撮影されたものなのかを計算し、複数の写真から風景を合成することができる。これが仮に「Flickr」のような写真共有サイトと結び付けば、いずれは世界中のあらゆる場所の風景を再生できるようになるだろう。撮影された写真から自動的に位置情報や撮影角度などを算出するというところなどは、まさにマシンソノミーである。GPS情報が無くても、自ら算出してメタデータとして利用することが可能になるのである。

Photosynth 「Photosynth」のイメージ

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