日経平均株価が6年9カ月ぶりに1万8000円台を回復するなど最近の株式相場は堅調な推移を見せているが、現在相場をリードしているのは鉄鋼、造船、不動産といったいわゆる内需系の大型株。物色の“蚊帳の外状態”にあるハイテク・IT関連銘柄の中にあって、一人気を吐いているのがシャープだ。
同社は大型液晶テレビの継続した好調などを背景に順調な業績推移を見せる中、これに伴い株価も上昇軌道に乗り、約7年前の1999年12月29日につけた上場来高値2675円に肉薄してこれを更新する可能性が強まってきた。
シャープが1月31日に発表した2007年3月期第3四半(2006年4〜12月)の連結決算は、主力の液晶テレビの好調と、携帯電話端末機の販売増加などにより、売上高は2兆2858億円(前年同期比10.6%増)、経常利益は1273億円(同17.9%増)、純利益は750億円(同19.6%増)となった。
第3四半期の液晶テレビの販売台数は434万台(前年同期比47%増)で、液晶テレビ市場全体では販売価格の下落が続いたものの、同社は30インチ以上の大型モデルの販売比率を9月中間期の実績となる47%から59%へと高めた結果、同期間の販売単価は上期に比べて9%程度上昇した。昨年10月から亀山第2工場(三重県)で生産した液晶パネル搭載の46インチ、52インチのフルハイビジョンモデルを販売しているが、「私たちが想定する以上に大型化が進んでいるようだ」(大西徹夫取締役)としている。
もうひとつの成長分野である携帯電話端末機の販売台数は、前年同期比10%増の975万台となった。ソフトバンクモバイル向けのワンセグ対応機種やNTTドコモ向けの高機能モデルが好調に推移したことに加え、新たにKDDIに供給を開始したことに伴い、売上高が増加したことも寄与した。
さらに同社は2月20日、液晶テレビ「アクオス」の新製品を発表した。従来の液晶ディスプレイはスポーツ番組など動きの速い映像の場合、プラズマディスプレイなどの他のディスプレイに比べて残像が見えやすいという欠点があるとされていた。今回の新製品は、新開発の液晶を採用することにより、動きの速い映像も滑らかに見えるようにしたのが大きな特徴。従来の液晶のパネルは毎秒60枚の映像を表示していたが、新型パネル「倍速ASV液晶パネル」は2倍の120枚を表示できるようになった。
こうした液晶の弱点をカバーするコンセプトの新製品発売や大画面化の進展による販売価格の上昇などにより、採算性の改善が予想されることから、2007年3月期の業績についても経常利益で2ケタの増益が十分期待できることになりそうだ。
シャープの株価は、1月中旬の2000円割れの状態から順調に上昇トレンドをたどり、2月23日には高値2330円まで買い進まれ、1カ月あまりの短期間に17%程度の急ピッチな上昇を見せている。この上昇は停滞銘柄が多いハイテク・IT関連銘柄の中では出色の存在と言える。
株価を2300円台に乗せてきたことで、7年前の1999年12月29日につけた上場来高値2675円も射程圏に入ってきた。さらに、ここにきて信用取引の買い残の減少と売り残の増加が同時に進み、直近の2月16日申し込み現在の東証信用残高は買い残高242万株、売り残高189万株となり、信用倍率は1.28倍と急速に拮抗。今後は信用取り組みの面からも株価の上昇期待が高まりそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス