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ネチズンの動きは「もろ刃の剣」

佐々木 朋美2007年02月05日 20時07分
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 韓国では最近、ネチズンによるインターネット上の書き込みや、それに伴う行動が過激になってきていることが社会問題と化している。

 つい最近では、音楽制作者のイ・ジュンヒョン氏による「サイワールド」のミニホームページが、非難や中傷で溢れかえるという事件が起こった。

 発端はテレビの100分討論番組。この日は「インターネット実名制」に関して、賛成と反対に分かれて討論が行われていた。インターネット実名制とは、本人の名前と住民登録番号(韓国国民全員に割り当てられる13桁の番号)が一致し、本人確認ができて初めてインターネット上に書き込みができるという制度だ。「個人情報流出」や「表現の自由の侵害」といった懸念を抱えつつも、インターネット上の誹謗・中傷対策として、2007年7月から断行されることとなっている。

 この番組で、動画ポータル「DC Inside」のキム・ユシク代表はインターネット実名制を強く批判し「悪質な書き込みに対して刑事的に処罰しようとする(警察の)意思が見えない。処罰を『強化していきましょう』ではなく、処罰したらいいのだ」とし「警察庁サイバーテロ対応センターに通報してもあまり対応してくれないような状態のまま、実名制を実施してもいいものか」と主張した。

 これに対しイ氏は「処罰強化以前に、ウェブサイトの運営者が事前処置を取った後、処罰すべきではないか」とし「かえって悪質コメントがつくのを楽しんでいるよう 疑わしい。悪質コメントでページビューが増え、これが収益につながっているのでは」と問い返した。

 この発言をDC Insideに対する批判と受け取った、同サイトの会員たち。彼らはイ氏のミニホームページに一気になだれ込み、非難や中傷などを書き綴ると、サイワールドのトラフィックも異常なまでに増加した。後にイ氏はミニホームページの書き込み機能がある部分を削除したうえで「DC Insideを指して批判したものではない」と弁明した。

 韓国のネチズンは時に、顔の見えない集団となって大きな行動を起こす。それは何かの意思表示や問題提起であることが多く、それに他のネチズンも賛同して世論を形成する場合がある。ネチズンからの人気を得て大統領にのしあがったノ・ムヒョン現大統領の例もあるように、韓国ではネチズンの意見を必ずしも軽視したりはしない。

 最近はネチズンによる問題提起がゲリラ的に行われる事件が起こり注目を集めた。1月中旬頃、「Naver」をはじめとした複数の検索ポータルにおいて、人気検索語ランキングの1位に突然、ファン・ウソク氏の名前が登場したのだ。

 ファン氏といえば2005年に肝細胞の捏造事件を起こし学会に波紋を広げた生物学者だが、最近では大きな話題になることも少なくなり、報道もすっかり下火となっていた。それが突然の人気検索語1位となることで、インターネット上は一時騒然となった。

 ふたを開けてみると、結局それはファン氏に研究を再開させようとインターネット上で署名を募っていた同氏の支持者たちが、より多くの人からの関心を集めようと故意に起こした行動であることが判明した。

 Naverといえば韓国一の接続者数をほこる検索ポータル。ここで検索語1位を獲得するというのは並大抵のことではないが、それをあえて1位に押し上げてしまうネチズンの行動力は相当なものだといえる。ただしその行動は本当に正しいことであるのか、冷静になって振り返ってみなければならない時もあるようだ。

 先のイ氏のミニホームページに悪質コメントを書き込んだネチズンの1人は「私ももちろんDC Insideユーザーなので、(イ氏の)ミニホームページに書き込みをしたが、あまりにも考えなしに過激なことを書いたようで申し訳ない」と後で述べている。

 またファン氏の検索語事件にしても、意図的に作られたランキングは、検索語ランキングの信頼性の問題に関わるのではとの見方もある。

 行動力と書き込みを武器に、世論や、はたまた大統領まで作り上げるネチズンだが、それが逆効果を生むこともある。インターネットの書き込みやネチズンの行動は両刃の剣であるということを知れば、行動を起こそうとする際にもう少し冷静になれるかもしれない。日本でもそれは同様ではないだろうか。

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