オープンソフトウェア企業Zend Technologiesの最高経営責任者(CEO)に就任したばかりのHarold Goldberg氏が収入を倍増させたいと語るなか、2007年は大企業やWeb 2.0を活用する新興企業に対象を絞り込む意向を明らかにした。
ベンチャー資本の後援を受けているZendは、オープンソーススクリプティング言語PHPで記述されたウェブアプリケーションを動作させる、複数の開発ツールを製作している。
1000万ドルから3000万ドル程度という同社の現在の年間売上を超えるために、ビジネスの焦点を現在の8〜9項目から減らすつもりだと、Goldberg氏は述べた。
同氏は、特にオープンソースのアプリケーションや標準が人気を獲得し始めている欧州で、企業および政府組織を相手にしたビジネスを強化することが目標達成の近道だと話している。また、無数のウェブサイトでPHPが使用されていることから、同社はいわゆるWeb 2.0新興企業についても、新たな販売対象として認識するようになっている。
さらにZendはIBMとパートナーシップを結び、メインフレームなどのバックエンドサーバからデータを引き出せるよう、PHPの開発言語としての機能を強化していくという。Goldberg氏は、IBMの「エコシステム」だけでも「巨大なビジネス」が見込めると指摘している。
Zendは、PHPアプリケーションを動作させる開発ツールおよびソフトウェアを含む製品ラインの拡充も図っている。
2月には、OracleおよびIBMのデータベースやMicrosoftの「Windows」とPHPアプリケーションの連係を最適化するためのソフトウェアが含まれた「Zend Core」をリリースする。
数千人の顧客を抱え、手元に資金をもち、売り上げを上げる手段を持っていても、Goldberg氏は多くのオープンソース企業のCEOと同じ懸念を感じているという。すなわち、今日の大手ライバル技術企業に比肩する規模を、オープンソース企業が実現できるのかという懸念である。
「わたしはこれまでの経験から、オープンソースのビジネスモデルがまだ完全には確立していないことが分かった。Red Hat以外で、持続可能なビジネスモデルを実現した企業は存在しない」(Goldberg氏)
エンタープライズソフトウェア企業のBMC SoftwareからZendへ移籍したGoldberg氏は、オープンソースコミュニティの力を借りて製品を開発する企業には、従来のソフトウェア開発とは異なる課題が突きつけられていると話す。
創立者を筆頭に、Zendの社員はPHPオープンソース開発に積極的に関わっているが、同社はプロジェクトを「完全制御」しているわけではないと、Goldberg氏は言う。
ビジネスソフトウェア業界が少数の大企業に収束していく中、過去5年の間に設立された企業の多くが、無料製品やオープンソースビジネスモデルを武器に大手と戦ってきた。
だが、ベンチャー資本がつぎ込まれたにもかかわらず、ビジネスを持続させ、同じだけの年商を上げるまでに成長する企業がどれくらいあるのかは分からないのが現状だ。
MySQLのCEOであるMarten Mickos氏は今週、ある英国人ジャーナリストに、同社の株式公開を検討していると明かした。2006年には、やはりオープンソース企業のTrolltechが株式公開を行っている。JBossが4億2000万ドルでRed Hatに買収されたことも、記憶に新しい。
Goldberg氏によれば、Zendは2006年に売り上げを倍増させており、2007年もこのペースを保つことが同社の目標だという。年末までには、キャッシュフローが黒字に転換する見込みとなっている。それと同時に、PHPオープンソース開発コミュニティを強化していくことも、Zendの命運を決めるきわめて重要な仕事だと、同氏は強調した。
「(Zend製品の)中核的なコードを、オープンソースで開発する取り組みを進めている。Zendの未来は、PHPコミュニティおよびオープンソース全般にかかっているのだ」(Goldberg氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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