ラスベガス発--新しいメディアと既存のメディアの違いがなくなる日が、まもなくやって来るかもしれない。
当地で開催されている世界最大の家電見本市Consumer Electronics Show(CES)の基調講演で、CBSのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のLeslie Moonves氏は、新しいメディアと既存のメディアの間にはもはやギャップは存在しないと述べ、メディアコンテンツと双方向的に関わりたいと考える視聴者のニーズを実現するために、CBSが行っている一連の取り組みについて詳しく説明した。
2007年のCESのテーマの1つとして、消費者に対し、あらゆる場所でコンテンツを提供することがある。そんな中、CBSの目標は、自社のコンテンツであるスポーツ、ラジオ、テレビを中心とした「より深みのある双方向的なコミュニティー」を形成することだとMoonves氏は言う。そのために、同社は新しいメディア企業とも良好な関係を築いている。その証拠として、Moonves氏は新旧を問わず、親しく付き合っているメディアの関係者たちを基調講演の壇上に招いた。
「(オンラインとテレビコンテンツとの)共生関係はこれからも深まる一方だろう。では、われわれのような大企業がやるべきことは何だろうか?われわれは、新しいメディアを大いに取り入れている。現在および将来において有望なものは何かを確かめるために、できることはすべて取り組んでいる」とMoonves氏は述べた。同氏によれば、こうした取り組みを行うゆえに、社外の人たちにも参加してもらうことが多くなっているという。
その1人が、Sling MediaのCEO、Blake Krikorian氏だ。どこにいてもインターネット経由でテレビ視聴を可能にする「Singbox」技術の発明者である同氏は、Moonves氏の講演する壇上に現れ、Sling Mediaの最新技術「Clip+Sling」を披露した。この新技術を使えば、ユーザーは放送中あるいは録画したテレビ番組をクリッピングし、Singboxを持っていない人を含め、あらゆる人とそのクリップを共有できる。クリップは電子メールで送信可能で、映像はSling Mediaのポータルサイトにホスティングされ、ここから再生される。
Clip+Sling機能のデモとして、Krikorian氏はCBSの人気コメディー「TWO AND A HALF MEN」のクリップを選択し、電子メールでMoonves氏に送信した。Moonves氏は壇上でメールをチェックし、そのクリップを番組の主演俳優Jon Cryer氏に転送した。Cryer氏は、そのメールを携帯端末からチェックし、Moonves氏から「またまたおもしろいと称する」メールが届いたと、皮肉交じりにぼやいてみせた(ただしこの部分は、あらかじめ録画された映像だった)。
基調講演は9日に行われたが、それ以前のインタビューでKrikorian氏は、Clip+Sling機能のリリース時期について、2007年の第2四半期に動画再生ソフト「SlingPlayer」のデスクトップ版とモバイル版に組み込まれる予定だと明かしている。CBSによると、どの番組かは決まっていないものの、同じく第2四半期に放送開始予定の番組の1つでClip+Slingのベータテストを行う予定だという。
YouTubeは一般ユーザーの作ったコンテンツで一大ブームを巻き起こしたが、CBSの狙いが、Clip+Slingを使ってウェブの力を最大限に活用し、同じような盛り上がりをプロの作ったコンテンツで起こす点にあるのは明らかだ。
Moonves氏は、CBSのようなコンテンツ所有企業は、インターネットでコンテンツを入手したいというユーザーニーズの取り込みに失敗した音楽業界の前例に留意すべきだと警告した。さらに同氏は、CBSは時代に取り残されるよりも、その最前線に立とうとしているのだと述べた。また、Clip+Slingのリリースにおいて、「コンテンツ所有者(この場合は、Moonves氏率いるCBSのこと)の事情を非常によく考慮してくれた」としてSling Mediaを賞賛した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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