“検索の巨人”Googleに対抗できるのか――。
成長市場として注目される中国で検索関連事業を展開する企業は、このような質問をよく受けるという。
11月に開催されたNew Industry Leaders Summit(NILS)の講演では、こうした質問に答えるのに適任と言える登壇者を招き、中国の検索関連事業における最新情報が披露された。
登壇者は、中国で旅行情報に特化した検索サービスを展開するQunar.com Co-founder兼CEOのFrederick Demopoulos氏、同じくモバイル検索大手のYiCha Online Inc CEOのBin Liu氏の2人で、Adobe Systems Incorporated Director of Emerging Market Investmentsの田中章雄氏がモデレーターを務めた。
まず、田中氏は中国の検索市場に関する概況を解説。田中氏によると、現在、世界で7億人のネットユーザーに対して7分の1にあたる1億人が中国人で、同じく20億人の携帯電話利用者の5分の1にあたる4億人が中国人という状況だという。世界のネットアクセスランキングでも、Google、Yahooなどの巨人がひしめく上位10位サイトの中で、4位、6位、10位に中国企業がランクインされているとした。
3〜4年前、日本や韓国の企業が提供するサイトも上位10位の中に見られたが、現時点で両国のサイトは見当たらない。つまり、検索を軸とする傾向にある上位サイトの入れ替わりは激しく、その大きな特徴として今、次世代ネット社会を意味するWeb 2.0のトレンドと並び、「中国」が目立って有力サイト運営企業として頭角を表してきているというのだ。
その代表格として最初に紹介されたのが、中国語で「今日何処に行くの」という意味の「Qunar」を社名に冠したQunar.com。Co-founder兼CEOのFrederick Demopoulos氏によると、同社は2005年5月の設立から18カ月間で、中国の旅行サイトでナンバー3の地位を手に入れた。成長の原動力となったのが、特定分野に特化した検索エンジン「バーティカル検索」の存在だ。
Qunar.comにおけるビジネスの特徴は、エンドユーザーだけではなく、旅行関係の情報を提供したいと考えている企業にとって有益なマーケティングツールとなるような提案をしている点。これを支える検索エンジンは、通常の検索では得られない整理された旅行情報を提供することに重点を置いて設計されている。
また、すべての情報がリアルタイムの情報更新を反映した形で提供されることも大きな特徴だ。特に、旅行商品は空室状況や価格が刻々と変化することが多いため、こうした商品特性に見合った機能を搭載していることは重要で、需要もあろう。
さらには、検索結果の品質保証を行っていることも特筆すべき点だ。何度検索しても目的のものが見つからないということがないよう、旅行に特化した検索エンジンであることから、著名な旅行サイト100社以上と契約している強みを活用し、その中から利用者が満足しうる最低限の検索結果を出せるようになっているとしている。
その結果として中国で3位の旅行サイトとなり、そこから見えてきたユーザー層についても触れた。一言で言うと、彼らのユーザー層は富裕層となる。
ユーザープロファイルを見ると、全ユーザーの35%が年間で4回以上旅行しており、そのうちの63%がオンライン上で予約。しかも、その72%がクレジットカードを利用している。Frederick Demopoulos氏によると、中国ではクレジットカードを持っている人が国内の数%程度なので、これらもろもろのプロファイルを見ると、ユーザー層のメーンが富裕層であることは明らかだ。
そのため、同社では比較的高いプレミアを付けての広告販売が実現できているという。収入源は85%を広告収入に頼っているが、コンバージョンレートが通常の検索経由に比べて8倍であるということをウリにしている。
中国では現在、「ネットマーケティングの4割は旅行関係」(Frederick Demopoulos氏)であるということから考えても、今後も大きなマーケットに対する各種施策を打ち出すことで、成長が見込めると見ている。
バーティカル検索ということにおいては、さまざまな分野でバーティカル検索が登場しているという。ここで共通して言えることも、Frederick Demopoulos氏は「特定の情報に特化して品質保証をすることにより、通常の検索より高いプレミアを付けられることである」との考えを示した。
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