マイクロソフトと「市民活動を支える制度をつくる会」(シーズ)は12月6日、NPOの業務効率向上をIT活用で支援する目的の協議会を発足させた。小規模団体向けのツール開発などと並行し、マイクロソフトの既存サービスと組み合わせた新規事業展開も視野に入れている。NPOの支持を集めてサービスの商品化に発展し、中小企業向けにもサービス展開が進めば、グーグルなどと競合するネット広告事業の強化にもつながる可能性がある。
発足したのは「NPO・IT推進協議会」。企業、NPO支援団体、IT技術者コミュニティ──の3者が連携することで、国内のNPOに対してIT活用の支援サービスを提供する。マイクロソフトとシーズが共同呼びかけ人となり、企業としては日本電気、大塚商会、日立製作所、松下電器産業、NPO支援団体としてはイーパーツ、IT技術者コミュニティからはINETA Japan、米Cluminis──の計9社が発足メンバーとなる。1年後に20社程度の参加を目指す。
NPOは国内で2万9000社あるが、その6割が10人以下の小規模で活動していることが多く、会員管理などIT活用が乏しい現状にあるという。同協議会は今後、NPOのIT活用を支える具体的なサービスを開発することで、NPOの効果的かつ効率的な活動が実現し、NPO全体の社会貢献活動の質と量が向上すると見ている。
12月6日にNPO向けの総合サイト「NPO plus」を開設。ここでの情報発信やイベント開催を軸に、具体的な経営支援ツールの開発を検討。2007年1月中旬をメドに第1回の会合を開催し、ここで今後の協議会の大方針や具体的な活動内容について詰める計画だ。
マイクロソフトが「実際には10万社程度存在するNPO」(マイクロソフト社長のDarren Huston氏)向けに業務支援ツールを開発して利用者が拡大すれば、さまざまな可能性が考えられる。その成果を商品化して中小企業向けに格安で提供したり、このツール利用者に向けて各種サービスを提供することもできる。例えば、マイクロソフトのオンラインサービス「Windows Live」を軸に、最終的にネット広告事業の売り上げ拡大につなげるという取り組みも可能だろう。
ネット広告事業でグーグルに遅れを取っているマイクロソフトにとっては、その追撃策の一環とも受け取れる。
これについてマイクロソフト広報は「確かに、Windows LiveやMicrosoft Office Groove(ネット上での共同作業支援ソフト)などを提供することは可能だ。IT化支援の領域としてNPO以外にも教育機関、中小企業、官公庁――を重点領域と考えているので、ビジネス的な取り組みも一緒に進めば理想的」としている。
ただ、企業とNPOの共同歩調が進展しない可能性も考えられる。協議会の支援を当然の奉仕と考えるNPOが続出すれば、高コストに耐えられなくなった企業が「投資対効果が低いと考えて撤退することも考えられる」(NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏)。そのため、NPOが「これをチャンスと捉えて前向きな姿勢で臨めるか否か」(同)、加えて企業側の取り組み姿勢が協議会の成否を左右し、マイクロソフトの新たなビジネス領域の開拓にも影響を及ぼすと見られる。
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