米SixApartの社長兼創業者であるMena Trott氏は11月16日、ブログやSNSのビジネス利用を紹介するイベント「Business Blog & SNS World」の基調講演に登壇。新ブログサービス「Vox」のデモンストレーションと、今後の戦略について語った。
Voxは既報の通り、10月に正式サービスを開始した、初心者向けの無料ブログサービス。プライバシー機能、ブログ作成の簡単さ、ブログを楽しめることに注力したサービスとなっている。
ブログを書くためのテーマがないユーザーでも、毎日出される質問に答える形で記事が書ける「今日の質問(QotD)」や、テーマにあわせた写真をアップロードする「Vox Hunt」といったサービス、そしてブログのデザインは200以上のテーマからクリック操作だけで変更できる。
また、同一のブログでも、記事単位、画像単位で「一般公開向け」「家族向け」「友人向け」と、閲覧者によってブログの表示範囲を変えるプライバシーコントロール機能を備える。ソーシャルネットーワーキングサービス的な要素も持つが、あくまでフィルタリングのための機能としている。
Trott氏は、Vox開発の背景について「よりパーソナルな用途でのブログツールが望まれており、こうした個人向けのブログは次の成長の波だと感じている」と切り出した。
パブリックなブログは、すべてのコンテンツを公開する形式のため、見知らぬ人からのコメントなどで、ブロガーにプレッシャーがかかってしまうこともある。6年前から個人的にブログを運営しているTrott氏は、自身の体験や調査から「家族や友達など、ごく身近な人たちとだけコミュニケーションしたいという人たちのために、パーソナルなブログが望まれている。たとえば、自分の母親でも安心して使ってもらえるツールを提供したいと思い立った」と語る。
Trott氏は講演の中で日本語版のVoxを使い、テキストの入力から始まって、動画や写真、音楽といったリッチコンテンツを簡単にアップするデモを披露した。外部のサービスと連携しているため、動画はYouTubeから検索したもの、写真は、FlickrやiStockPhoto、さらにはAmazonのお気に入りの本や写真をアップロードするといったこともスムーズに行える。
さらに「ブロガーは、ブログに貼り付けたい外部コンテンツを検索して、そのJavaScriptやhtmlタグをコピー&ペーストする作業をしているが、Voxではそれが手間をかけず、すぐにできる。技術的な面でいえば、私たちは、データがオープンになっていることの重要性に気がついた。データがオープンなら、コンテンツをVoxに容易に取り入れることができ、またVoxから取り出すことも同じ」(Trott氏)と、データのオープン性について語った。
続けて、Trott氏の夫である同社CTOのBen Trott氏がWeb 2.0 summitで発表した「Open Media Profile」を紹介した。Open Media Profile は、Voxの機能を外部のサービスでも利用できようにするためのAPI。Trott氏は、「ユーザーのデータを“囲い込む”よりも、ユーザー自身がデータをコントロールできるようになることが重要」という。
Trotta氏は「私たちは、もっともっと新しい人にブログを楽しんでほしいという情熱を持って取り組んでいる。Voxは、ブログが次のレベルに向かうための第一歩であると信じている」と締めくくった。
基調講演の後に開かれたプレス向けのラウンドテーブルではTrott氏のほかにVoxの責任者であるCorporate Development担当バイスプレジデントのAndrew Anker氏、シックス・アパート代表取締役の関信浩氏らが出席し、Voxの事業展開について説明した。
Voxは正式にサービスを開始してまだ3週間ほどだが、日本で約1万5000ユーザー、米国で約8万5000ユーザー、全世界で約15万ユーザーとなる。「我々が思っていた以上に良い反応で、特にファンになってくれたのは新しいサービスについて懐疑的だった、ブログ経験があるユーザーだった」(Trott氏)という。
今後の展開については「ユーザーの数を単に増やすのではなく、アクティブユーザーを増やしていきたい」(Trott氏)と語る。現在日米仏の3言語で提供しているインターフェースも、2007年には新たに2言語を追加する。
そして、今後、ブログを書いた経験のないユーザーに対しては「急にやってくださいといってブログをやるわけではない。まずはブログを読み、コメントを付ける、そしてブログが簡単なことを知ってもらわなければならない」(Andrew氏)と語り、まずはブログに理解のあるユーザーへVoxを紹介していき、2007年からはブログの未経験者に対してのアプローチを進める。
ビジネスモデルとしては広告および、QotDのスポンサーが中心。広告については、あくまでコンテンツの一部としてブログと統合した形で見せるという。ただしVoxは無償で提供するサービスであるため、アフィリエイトへの対応は検討していない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス