米国政府はインターネットの基盤を過度に支配してきたのではないか、という長期にわたってくすぶってきた論議が、ギリシャで現地時間10月30日に開幕する国連サミットで再び燃え上がりそうだ。
各国から外務担当者や技術担当大臣など約1200人がアテネ郊外のホテルに集結し、この問題に関する議論を再開することになる。こうした議論は、Bush政権とそれに歩調を合わせる少数の西側諸国と、これに対するブラジル、インド、中国、アフリカ諸国との間で、頻繁に繰り返されてきた。
公式には、これは国連のInternet Governance Forum(IGF)が行う最初の会合で、言論の自由、セキュリティ、スパム、多言語使用などについて意見を交換することを目的とする。
しかし、表面に出ない外交上の論点はもっとはっきりしている--米国政府はインターネットアドレスやドメイン名の割り当て方法に関して、過度に影響を及ぼしてきたのではないか? 2006年9月29日に契約更新が発表(PDFファイル)された、Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)と米商務省との関係における変化は、国際的な懸念を和らげるのに十分か?--というものだ。
欧州委員会は、関係の変化を好意的に受け止めている。欧州連合の情報社会およびメディア担当委員Viviane Reding氏は10月2日、「米国政府が宣言した、ICANNにより多くの自治を与えるという意向を歓迎する。この移行が、業界と市民社会の利益を等しく反映する形で、透明性が保たれたまま確実に進むよう、われわれは助言を行って貢献するつもりだ」と述べた。
世界に支部をもつ非営利団体のインターネットソサエティ(ISOC)も同様に、今回の変化を支持し、ドメイン名システム(DNS)の「民間部門での管理に向かう建設的な前進」と評価した。ICANNは米国政府との合意に基づき、インターネットアドレスとドメイン名の機能を管理運用している。
しかし、欧州委員会とISOCの後には、批判的な見方も出てきた。米国の学会が中心になっている団体Internet Governance Project(IGP)は、独自の分析を発表し、大きな変化はないと結論づけた。この分析には、「新たな合意は、米国政府の支配のレベルを実質的に低減するものではない」と記されている。
こうした見方は、第三世界の国々の怒りをあおりそうだ。これらの国々は、チュニジアで開かれた2005年の前回サミットで割り当てられた時間の多くを費やし、米国は数十年前に自ら作り出したインターネットを不当に支配しているとして非難した。また、Bush政権が2005年8月にポルノ用ドメイン「.xxx」の成立に反対し、その後ICANNが態度を翻して提案を却下したことも、批判的な国々をいら立たせている。
チュニジアサミットでは、キューバ、イラン、ジンバブエなどの国々が、インターネット上での言論の自由を支持する米国を猛攻撃し、国連の指導の下で規制を強化すべきだと訴えた。ジンバブエのRobert Mugabe大統領は、「無政府主義的で無秩序な表現の自由を支持する人々は、すでにその成果をあげ始めている」と述べた。Mugabe大統領は、警察を使って反体制派を拷問したとして、Amnesty Internationalに訴えられている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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