商品購入は比較よりも推薦--リコメンドエンジンに賭けるALBERT - (page 2)

インタビュー:永井美智子(編集部) 文:吉澤亨史2006年10月26日 18時07分

 項目の選定には評価グリッド法という調査手法を使用しています。これは消費者の思考プロセスを元にした手法で、商品を購入する際にどういった点に着目するかということをインタビューやアンケートを通じて抽出しています。例えば家電では、評価グリッド法やそのほかの調査方法を使って得た、延べ5000人の意見を参考にしています。

 この項目は、実際の店舗で店員が質問するのと同じような内容になっているので、サイトを訪れた人にとってはわかりやすく自分に合った製品を知ることができるのです。すべての項目を設定していくと、最後に推薦結果としてその人のニーズに合致する商品を選び出し、合致率の高いものから表示します。また、パートナー企業の店舗で実際に働いている店員からのコメントも合わせて表示されるようになっています。

 Bull's eyeを活用することで、実際のお店と同じようなアプローチをユーザーに提供できます。ALBERTでは、このリコメンデーションエンジンをASPとして販売しています。2006年7月にはヤマダ電機に導入していただいています。これまでリコメンデーションのような推薦型のシステムは、導入した際の効果がわかりづらいこともあって、価格比較サービスが業界の主流になっていました。しかし、各所でBull's eyeを紹介していただいたこともあって、いろいろな企業から相談を受けるようになりました。

--ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)も提供していますね。また、教えて!シリーズのサイトも増えています。

 「My教えてーな」は、CGMとSNSを組み合わせたサービスです。私たちはソーシャルでなくコンシューマの意味で「CNS(Consumer Networking Service)」と呼んでいます。mixiなどのSNSは、人を介して人と人がつながっていきますが、CNSは商品やサービスを介して人と人が有機的につながっていくイメージです。

 例えば、買いたいと思っている商品を登録すると、その商品をすでに持っている人の評価を見ることができます。また、その人がほかに持っている商品を見ることもできるので、意外な商品と出会うこともあるわけです。「My教えてーな」を活用することで、買い物に関わる悩み事を解決できればと考えています。

 また、9月1日には「教えて!Beauty」と「教えて!ブライダル」の2つのサイトをオープンしました。さらに9月22日には「教えて!保険」をオープンしています。

 特に保険は選ぶことが難しい商品であり、以前ALBERTが実施した調査でも「買い物の際に迷う商品」の2位になっています。ちなみに1位がデジタル家電、同率の2位には旅行という結果でした。

 保険はセンシティブな商品である反面、ほとんどの保険が資料請求をしないと詳細な情報を得られません。しかも、資料を見ながら検討するのは難しいため、リコメンデーションに向いた商品といえます。医療保険だけでいいとか、死亡保険の保険料、入院特約を付けるかどうかなど、保障内容などの希望から最適な商品を提案できるわけです。ALBERTでは設立当初から保険を扱いたいと考えていたため、保険代理店の資格も取り、現在は保険会社7社の商品に対応しています。

--今後のALBERTの展開は。

 ALBERTには、Bull's eyeによるリコメンデーションサービスと、インタースコープの頃からのデータ分析事業という2つの大きな軸があります。この両方をバランスよく発展させていきたいと考えています。また、双方のデータを分析することで、よりリアルなニーズが見えてきます。そのデータを元に、今後はメーカーなどの商品開発も提案していければと思っています。

 月間ページビューは現在、平常時で70万〜80万、プロモーション展開時で100万ありますが、これはもっと増やしていきたいですね。また、ユーザー数も4〜5年のスパンで500万人くらいに増やしたいと考えています。

 会社としては、設立から1年強が経過して、やっとやらなきゃいけないことが見えてきた感じです。社内のルール作りやコンプライアンスの整備など、4〜5年後の上場も視野に入れた組織作りを進めています。

 将来的にはBtoCサービスにも力を入れて、メジャーなサイトにしたいですね。消費者支援のサービスをひとつひとつじっくりと深く作り込んでいきたいと思っています。価格比較型のサイトよりは後発のサービスになりますが、価格比較型サイトは情報感度の高い利用者が多い。私たちはもっと大多数のフォロアーを対象としているため、ターゲットが異なります。今後もこのフィールドで戦っていきたいですね。その際に、2500万人の会員を持つニッセンとのつながりは強みになると思います。

 そして、自前主義にこだわらずに、いろいろな企業と提携していきたいと考えています。市場や商材、サービスによって勧め方は違いますが、顧客に最適なアプローチができる、リコメンドのパイオニアを目指します。

--上村社長自身の目標はありますか。

 ベンチャーを始める前は、いろいろと「こうなりたい」という目標がありました。でも、ALBERTを設立してからは、その主語が自分ではなくなっているんですよね。「自分がこうなりたい」ではなく、「ALBERTがこうなりたい」という目標に変わってしまったんです。これには自分でも意外だと感じています。

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