これらのユーザーインターフェースはパソコン上で作成でき、携帯電話上での表示/動作もエミュレータで確認できる。また、画面のデザインだけでなく、機能の細かいカスタマイズも可能だ。
例えば、子供用のインターフェースであれば、子供が使っていい機能だけを絞り込んだメニューを用意することもできる。シニア向けの場合には詳しい説明付きのメニューを採用したり、文字やコントラストを調整してシニアでも見やすい工夫をしたりすることもできるようになっている。
また、デザイン性を優先させるユーザーに対しては、3次元の効果を使ったり、動画やフラッシュなどのコンテンツと組み合わせたりしたものを提供することも可能だ。
メッセージングの分野では、VIVID Messageが代表的な製品となる。これは、メール本文中にキーワードを見つけたら自動的に絵文字を入れたり、文字を動かしたりするというものだ。テキストに対応して自動的にイラストが表示されるようにしたことで、絵文字を入力するのが苦手な人でも利用できる。
「絵文字は既に携帯電話では文化となっており、絵文字が入っていないメールを送ると“怖い”とか“怒っている”というように感じる人もいるようだ」
VIVID Messageはその機能がわかりやすいこともあり、「海外でも非常に喜ばれている」という。新しいコミュニケーションとして期待されているのというのだ。
このほか、電話をかけた相手が、受け手の着信音を選べる「VIVID Ring」、ゲームの開発環境である「X-Forge」などの製品があり、今後は携帯電話でパノラマ写真が撮影できる「VIVID Panorama」も提供する計画だ。
製品ラインアップは今後さらに拡充していく予定だという。携帯電話のミドルウェアを提供している企業にはブラウザを提供するACCESSやJavaプラットフォームのJBlendを開発・販売しているアプリックスなどがあるが、いずれも1つの製品に注力することで成長してきたことを考えると、この戦略は異色と言っていいだろう。
「当社では、単一商品に頼らず製品ラインアップを充実させ、純粋にライセンスビジネスを伸ばしていきたいと考えている。そのために、グローバルマーケティングを強化し、世界で競争力のある製品を次々に開発していくとともに、他のデバイスへの展開も視野に入れていきたい」
アクロディアの2006年3月期の業績は、売上高が10億7728万円、経常利益は8400万円となっている。2007年度には売上高が21億8800万円、経常利益は2億6300万円にまで急拡大する見込みだ。
これだけ短期間でここまで成長できたのは、アクロディアの持つ事業の開発スピードによるところが大きい。そしてその背景には、堤氏の経歴が少なからず関係しているようだ。
堤氏は、以前3Dアプリケーションをリアルタイムに動作させるMascotCapsuleで有名なエイチアイにおいて副社長兼CTOを務めた経歴を持つ。当時の経験や業界での人脈が、アクロディアで生かされているのだ。
「アクロディアとしてはまだ若い会社だが、事実上は長期間にわたって、携帯電話業界に身を置いていたことになる。エイチアイでは携帯電話業界におけるマーケティングのノウハウや技術を学んだ」
さらに同社の核となる人材は、堤氏と同じ大学の研究室で同じ人工知能の研究をしていた先輩・後輩の関係だという。持っているバックグランドが同じため、軸がぶれず、スピード感をもって事業を展開できる体制が整っているというのだ。
今回の上場によって、アクロディアは6億9460万円を調達する。研究開発や設備投資などに調達資金を充てる計画というが、堤氏によれば上場の目的は資金調達よりも、携帯電話のユーザーインターフェースをもっと変えるべきだという同社のメッセージをより世の中に広めることにあるという。
ユーザーインターフェースは、これまで通信キャリアはメーカーに任せていた聖域だった。しかし、携帯電話の番号ポータビリティ制度の導入を機に、他社との差別化ポイントとしてユーザーインターフェースに対するキャリアの関心が非常に高まってきている。アクロディアにとって追い風の状況となっているのだ。
今後は、携帯電話だけではなく家電やカーナビといった分野にも進出していきたいという。「ユーザーインターフェースは携帯電話や家電に残された、数少ない新たなプラットフォームだ」と堤氏は話し、ここを制することで確固たる地位を築きたい考えを示した。
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